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第五章
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いきなり現れた悠叶は、ズカズカと二人に近付くと響弥の肩を掴み迅鵺から引き剥がす。
そのまま勢いに任せて、店の外壁とは反対側の壁に叩き付けた。
「──────っ!」
背中からのビリビリとした振動と衝撃に顔をしかめる響弥。
そんな響弥に悠叶は、物凄い形相で詰め寄った。
「言いましたよね?俺から迅鵺さんとの時間を奪うなと。」
普段はおっとりとした悠叶だが、この大きな図体と怒りを露にした悠叶の迫力に、この場の空気が集中する。
静かに・・でも、どす黒い悠叶の怒りがひしひしと伝わるようだ。
それでも、響弥は怯まなかった。自分よりも大きな悠叶の胸を押し退けて、自分から引き剥がす。
「お前に迅鵺は渡さない。迅鵺を傷付ける奴は、どんな野郎でも許さない。」
今まで可愛がってきた後輩、それが恋愛感情へと変化した響弥の気持ちは大きなモノだ。
けれど、悠叶も自分の性癖に劣等感を抱いてるからこそ大切にしてきた迅鵺との時間に、響弥にも勝る想いがあった。
「それは、俺の台詞です。俺から迅鵺さんを奪うつもりなら、一層のこと今この場で迅鵺さんを殺します。」
悠叶の思いもよらない言葉に、その場は一瞬静まり返る。
けれど、迅鵺よりも先に声を上げたのは響弥だった。
「てめぇっ!ふざけたこと言ってんじゃねぇっ!」
言葉を発すると同時に悠叶に掴みかかろうとするが、悠叶はそれを突き飛ばして躱すと迅鵺の目の前に立った。
「────悠叶さん・・冗談っすよね?」
迅鵺は、自分を殺すと言った悠叶に警戒の色を隠せない。
そんな迅鵺の様子に、悠叶はとても切なげな表情で手を伸ばすが、迅鵺にその手を払われてしまう。
「悠叶さんっ!なんでこんな事するんですかっ!?」
迅鵺は声を荒げた。
今目の前に居る悠叶は、あの男と重なって見えて複雑な心境になってしまう。
迅鵺が実際に見てきた悠叶と、この世の者とは思えないあの男。
外見だけが瓜二つな二人の人物が、交互に脳裏に浮かんでくる。
だが、今の悠叶はあの男に近い雰囲気を醸し出していて、迅鵺は“やっぱり響弥さんの言った通りだったのか?”と思いたくないのに思ってしまう。
冷や汗が流れた。
悠叶の手を振り払った拍子にバランスを崩して、そのまま後ろへ倒れるが、肘を着いて頭が地に着くのは防げた。
けれど、上体を起こす間もなく悠叶が跨がって迅鵺の首を絡めとったのだ。
「────迅鵺さんっ・・ごめんなさいっ・・好きです。ずっと、好きだったんですっ。」
悠叶は泣いていた。
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