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第五章
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────奏太との出来事があってから約三週間、今までは当たり前だった独りの世界が酷く辛い物となった。
ほぼ毎日、悪夢を見た。
蔑むような冷たい目で世間に見られる夢。
“お前はなんの為に生まれてきた?”
“お前みたいな奴がなんで生きている?”
“お前なんて死ねばいいのに“
そして、最後には必ず奏太と一緒に居た男二人に首を絞められ殺されるのだ。
“お前みたいな奴は、一度死ぬ程の苦しみを思い知った方がいい”
毎日毎日、脳裏にこびりついて剥がれない重い言葉だった。
きっと奏太は、死んでしまうのではないかと思う程の苦痛を味わったのだろう。
悠叶は悪夢を見る毎日で、奏太の恐怖や苦痛を思い知らされていくようだった。
三週間もの間、食欲も無く眠れない日々が続いた悠叶は、心身共に限界を迎えようとしていた。
“こんなに辛いなら死んだ方がマシだ”
これまでに思った“死んだ方がいい”とは、比べ物にならないくらいの気持ちだった。
悠叶は、ついに自分の人生に終止符を打とうとしていたのだ。
そんな、まさしく不幸のどん底に居た悠叶の目の前に、又もや迅鵺が現れた。
八月二十八日、悠叶は自らの命を断とうと首を吊る為のロープを買いに、古びたアパートの部屋を出た。
すると、アパートの直ぐ近くのコンビニ付近にある立派なマンションに一台の引っ越し屋のトラックが停まっていて、その傍に迅鵺は居たのだ。
「────あの人・・この前の・・・」
迅鵺は、自分が買ったマンションでの生活に胸を踊らせているのかとても上機嫌で、その時の悠叶にとっては眩しいくらいに輝いて見えた。
とても、直視なんて出来ないくらいに。
直視なんて出来ないと思うのに、その生に満ち溢れているような生き生きとした迅鵺から目を離せない。
一瞬で心を奪われた。
悠叶の孤独な闇を晴らしたのは迅鵺だった。
そう思ってしまったのは、悠叶が酷く弱っていたからなのかもしれない。
けれど、そのタイミングで出逢ったからこそ運命だったのだ。
少なくとも、悠叶の中ではそうだった。
一筋の涙が頬を蔦って落ちる。
“もう一度、人を好きになってもいいだろうか?”
もう、決して触れたりしないから。
絶対に傷付けたりしないから──・・
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