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第五章
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「うあ"あああああっ!!俺はっ・・俺はっ、とんでもない奴だっ!あんなに心に誓った筈だったのに・・結局、いつの間にかあなたの傍に居て・・迅鵺さんに手を掛けていた癖にっ──・・!!」
暗い路地裏に一人取り残された悠叶は、酷く取り乱していて、自らの頭に爪を立て血が滲む程にその手には力が込められている。
激しく後悔をしていた。
毎週会ってくれる迅鵺に、いつの間にかうやむやになっていた心の闇の部分。
最初は、迅鵺の知らない所で見ているだけでも良かった筈だったのに、人間というものは少しずつ欲が出て来るものなのかもしれない。
“もう、ここには来ないで下さい”
迅鵺の言葉は、悠叶の胸を抉った。
自分が悪い事は痛い程に分かっている。
けれど、悠叶にとって言葉通り最後の生きる糧となった迅鵺に嫌われたとなっては、今度こそ悠叶はこの世に生きる意味を無くしてしまった。
“やっぱり俺は生きているだけで罪なんだ”
今の悠叶には、そうとしか思えなかった。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔もそのままに、ゆらりと立ち上がるとヨロヨロと覚束無い足取りで歩き出した。
途中色んな物にぶつかりながら大通りに出た時、赤信号に気付いているのか気付いていないのか分からないくらいの無表情で道路へ足を進める悠叶。
その大きな体を、強い車のヘッドライトが照らした。
悲鳴にも似たその場を劈くような、タイヤが地面を擦る音が辺りに鳴り響く。
その音が一番集中した場所には、車に跳ねられた悠叶が横たわっていた。
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