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第六章
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「────響弥さん、俺、」
「分かってるから言うな。お前、わざわざ釘刺して俺に止めを刺すつもりか?勘弁してくれよ・・さっきはアイツの所に行くって訊かねぇから、つい我を忘れちまった。すまねえ・・」
気まずそうに話そうとした迅鵺の言葉を、響弥は途中で遮り、なるべく明るく言った。そんな響弥の気持ちを汲んで、迅鵺はそれ以上この話には触れなかった。
そして、迅鵺がもうひとつ話しておきたい事があると言うと、響弥は喉が渇いたと迅鵺に許可を貰い、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを二本持ってきて、一本は迅鵺に手渡し、もう一本は自分が一気に飲み干す。
迅鵺は渡されたミネラルウォーターで喉を潤し、一段落したところで口を開いた。
「────悠叶さんのことなんすけど・・」
迅鵺の口から“悠叶さん”と聞いた瞬間、響弥は怒りをその顔に露にさせると、勢い良くソファーから立ち上がる。
「迅鵺っ、てめぇっ!!まだ懲りてねぇのかっ!?」
響弥の怒鳴り声がリビングにビリビリと響き渡った。
「響弥さん、座って下さい。」
響弥の物凄い剣幕にも臆する事なく、静かに座るように促す迅鵺に、怒りを鎮めた訳ではないが冷静さを取り戻した響弥は、そのまま腰を下ろす。
「お前、まさかまた会いに行くとか言うんじゃねぇだろうな?」
怒りで昂った感情を押さえ付けるように低い声で聞くが、迅鵺は少しだけ間をあけて、後ろめたい事でもあるかのように目線を斜め下に反らす。
「────正直、分かりません・・」
迅鵺の正直な気持ちだった。
あの場では混乱していたが、帰りのタクシーの中で冷静さを取り戻した迅鵺は、迅鵺なりに考えていた。
勿論、今まで騙されていたんだという気持ちから怒りの感情もある。
けれど、お店に会いに来ていた悠叶の様子を思い出すと、単に騙されていただけだとは思えなかった。
迅鵺の記憶にある悠叶は、図体はデカイ癖にちょっと気が弱くて酒も弱い、実家の猫にデレデレで、実は料理も上手で、いつも優しく笑う写真を撮るのが好きなカメラマン。
響弥には嫌われているが、他のホストからも良い人だと評判が良くて・・
最初は、無理やり迅鵺を犯した男にそっくりで警戒もしたし、今だってその事を思い出せば怒りだって湧いてくる。
悠叶に殺されそうになって、あの男と重なって見えたのも事実で、もしかしたら何かしらの繋がりがあるのかもしれないとも思う。
だけど、それでも迅鵺の脳裏に浮かぶのは、いつだって笑って迅鵺を慕う純粋そうな少し気の弱い悠叶の姿だった。
そして、何よりも首を絞めているのは自分だというのに、泣きながら謝罪の言葉を繰り返す悠叶の姿が、何故だか頭から離れないでいた。
迅鵺の曖昧な言葉に、響弥は眉間に皺を寄せ苛立っているのが分かる。
「────すいません。心配ばっか掛けて・・でも、それが俺の正直な気持ちなんです。悠叶さんに騙されてたとしても、本当に今までずっと俺を殺そうと思っていただなんて思えなくて・・今だって、悠叶さんが泣いてる気がして・・モヤモヤするんです。」
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