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第七章
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「──────悠叶さんっ!!」
迅鵺は、自室のベッドで叫んで飛び起きた。肩で荒い呼吸をしていて、額には汗が滲んでいる。
「ハアッハアッ───・・ゆ、め・・?」
いつもの夢だと気付くが、いつもとは違う終わり方だったのが気になる。
“さよなら・・”
そう言って消えてしまった悠叶。
迅鵺は、どうしようもなく胸騒ぎを感じていた。
「────くそぉっ!一体なんだってんだ!?そもそも、毎晩毎晩、夢の中に出てきやがってっ──・・なんで、あんたがそんなに泣いてんだよっ!!」
迅鵺は、布団をギュッと握り締めて、やり場のない気持ちに苛立っている。
落ち着かない様子だったが、意をけしたように布団を勢い良く剥いだ。
「さよならって、なんすかっ!───俺、決めました。何も言わずに消えるつもりなんすよね!?そうはさせねぇっ!!」
迅鵺は、そう言うなりヘッドボードにあるスマホを乱暴に取ると響弥の電話番号を探す。
響弥との約束を守る為だ。
「お疲れっす。───あの、悠叶さんの事なんすけど、会うことに決めたんで・・色々、心配掛けてすいません。」
響弥には溜め息を吐かれたが、了解を得た迅鵺は、今度は悠叶の電話番号を探して、スマホを耳に当てた。
『お掛けになった電話を、お呼び出し致しましたが、お繋げ出来ません───』
数回のコール音の後に流れる、無機質な女の声のアナウンスが聞こえてくる。
迅鵺は、すぐに切るともう一度呼び出した。
けれど、結果は同じで、この日、何度掛けても悠叶に繋がる事はなかった。
「────くそっ!本当に、黙って居なくなる気なんじゃ・・でも、着拒されてる訳じゃねぇんだよな・・なんで、電話に出ないんだっ・・・」
“もう、ここには来ないで下さい”
「────あ・・、そういえば俺、そんな事言ったような・・・」
迅鵺は、そう呟いて溜め息吐くと、諦めて仕事の準備を始めた。
そして翌日も、誰も居ない自室で忙しなくブツクサと一人言を言っている迅鵺。いつも通り昼前に起きた迅鵺は、既に6回も悠叶に電話を掛けている。
迅鵺は気になっている事があった。
あんなに毎日しつこく同じ夢を見ていたというのに、今日は夢なんて何も見ていなかったからだ。
胸騒ぎを感じずには居られなかった。
気を取り直して電話を掛けようとスマホを手にしたが、迅鵺のスマホの画面に“鮎沢 悠叶”の文字が映し出されて着信を知らせるメロディーが流れる。
迅鵺の胸は一瞬で跳ね上がるが、悠叶から連絡が来たことに安堵の溜め息を吐いて通話の文字をタップした。
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