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第七章
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「悠叶さんっ!何回も電話したのに、なんで昨日出なかったんすかっ!?俺がどれだけっ───」
電話に出るなり怒鳴る迅鵺だが、電話越しに聞こえてくる声は思っていた人物の物ではなく、喋っている途中だが少しずつブレーキを掛けていくように声のトーンを下げていくと、相手の声が良く聞こえるように黙り込んだ。
もしかして、既に番号を変えてて別の人の番号になってんのか?
とも、思ってしまう迅鵺。
『あ、あのぉ~・・悠叶とは、よく会ったりしている方なんでしょうか?』
色々と勘繰った迅鵺だが、聞こえてきたのは年配女性のもので、どうやら悠叶とは全くの無関係という訳でもなさそうだ。
迅鵺は、戸惑いながらも“はい”と返事をした。
すると、女性から聞かされた話に迅鵺は驚きを隠せない。同時に“自分のせいなのでは?”と思ってしまうような内容だった。
彼女は悠叶の母親で、悠叶は事故に遭って入院しているらしく、それも事故に遭ったのは迅鵺達が揉めたあの日。未だに目が覚めないらしい。
悠叶を跳ねた加害者の話によると、飛び出して来たのは悠叶の方だと言うのだ。
その様子は、なんだかフラフラとしていて、自ら道路に飛び出して来たように見えたと、悠叶の母親は聞かされたようだった。
昨日の迅鵺からの大量の着信からして、仲が良い友人だと思った母親は、事情を話した方がいいだろうと思い、こうして折り返し電話をしてくれたそうだ。
迅鵺は、夢のことを思い出していた。
やっぱりあれは、悠叶からの知らせだったのではと・・
迅鵺は、自分を責めずにはいられなかった。ちゃんと話も聞かずに、あんな暗い場所に置き去りにした。
悠叶がこんな事になっているとは気付かず一週間もただ悩んでいただけだと。
そして、昨日の夢では悠叶は“さよなら”と言って消えてしまい、今日は夢すら見なかった。
迅鵺は、震え上がる思いだった。もしかして、本当に消えちまうんじゃ・・
嫌な予感が脳裏を過ぎる。
同じ事を昨日も思った。
迅鵺は、渇いて水気のない喉を無理やり潤すように、なんとか唾を呑み込む。
それでも、カラカラに渇いてしまっている喉から絞り出すように、震える声を捻り出した。
「────あ、あの・・病院は、どちらに・・」
やっと出た言葉だった。
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