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第七章
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「────ハアッハアッ、」
悠叶の母親から聞いた病院まで急いで来た迅鵺は、冬場だというのに体中汗だくになっていて、勢い良く開けた病室のドアの向こうから、ベッドで眠っている悠叶の姿が目に飛び込んでくる。
そのベッドの傍らには、椅子に座っている年配女性が居た。きっと、電話で話した悠叶の母親だろう。
急いで来たせいで乱れた呼吸を落ち着かせながら軽く会釈をすると病室のドアを、今度はゆっくりと閉めて、ベッドを挟んで母親が座っている反対側の手前の方にパイプ椅子を持ってくると向かい合うようにして腰掛けた。
「騒々しくドアを開けちゃってすいません・・あの、俺、悠叶さんの友人で神谷 真迅(かみや まさとし)といいます。」
迅鵺は、本名を名乗ると悠叶の容態を伺った。悠叶の母親は見るからにやつれていて、目の下の酷いクマから寝不足だという事が分かる。
そんな母親の弱々しい姿に、迅鵺は胸を痛めた。
「────先生が仰るには、悠叶の目立つ怪我は右腕の骨折と打撲、足の裂傷くらいで脳にも異常はないみたいなの・・それなのに、目を覚まさないのよ・・・この子はね、小さい時から気が弱くって、図体ばかり大きく育ってね・・でも、とても優しい子だったわ。───自殺なんてするような子じゃないと思ってたんだけどっ──・・」
そこまでなんとか話した母親だったが、耐えきれないと言わんばかりに、肩を震わせて涙を流す。
迅鵺は、どうしようもなく居たたまれなくなったが、膝の上でギュッと拳を握って、悟られないように堪えた。
暫く病室には、啜り泣く声だけが聞こえていて、涙を止められない母親は、席を立ち謝りながら病室を出て行った。
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