アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第七章
-
「────あれっ?俺、なんで泣いて・・」
迅鵺は、自分の涙が流れている事に気付いて、慌てて拭い取ると無意識だったとはいえ悠叶の唇に触れていた事に恥ずかしくなって、つい顔を赤らめた。
「────っ・・」
少しの間の後、恐る恐る悠叶の唇に触れた指先を自分の唇に当てる。
静かな病室では、音が胸から漏れだしてしまいそうな程に、ドキン、ドキンと鼓動させていて、迅鵺は今まで感じた事もない気持ちに戸惑っていた。
響弥にキスされた時とも、お客とキスした時とも違う、切ない胸の高鳴り──・・
「─────っ!俺は、おかしくなっちまったのか!?そもそも、毎晩毎晩、人の夢にまで出てきて、あんなキスなんかしてきやがるからっ──・・」
迅鵺は、誰に言い訳しているのか・・眠っている悠叶しか居ないというのに、柄にもなく顔を真っ赤にして言い訳じみた事を言う。
そんな時、迅鵺が騒々しくしたせいなのか分からないが、ずっと眠っていた悠叶の喉から、微かな呻き声みたいな声が迅鵺の耳に届いてきた。
その瞬間、あたふためいていた事なんて一瞬で忘れてベッドに手を着くと、悠叶の顔をしっかり覗くように勢い良く前のめりなる。
「悠叶さんっ!?」
「んっ────・・」
眉間に皺を寄せたかと思うと、ふっと力が抜けたように眉間の皺が無くなり、眼球が動いているのか瞼が動く。
そして、ゆっくりと瞼が開かれて、視点の定まらない悠叶の視界に入るように、迅鵺は姿勢を低くした。
迅鵺の顔を捉えたのか、悠叶の瞳に生気が色付いていくようだ。悠叶の視点が、迅鵺の顔で定まると閉ざされていた唇が微かに動く。
「────とし、や・・さん・・」
約一週間もの間、ずっと目を覚まさなかった悠叶の喉は渇き切っていて、掠れた声で名を呼ばれる。
迅鵺は、無事に目を覚ました悠叶の姿に、色々考えていた事だとか、聞きたい事だとか全て忘れて悠叶に覆い被さるように抱き付いた。
「─────っ!?迅鵺さん・・どうしてっ・・」
「悠叶さんの馬鹿野郎っ!!どんだけ目を覚まさなかったと思ってんすかっ!!」
戸惑う悠叶を他所に、迅鵺は声を荒げる。
そんな迅鵺の姿に、悠叶は零れそうな涙を堪えるように眉間に力を込めるが、結局意味を成さなかったようだ。涙を流して“ごめんなさい”と、まだ掠れる声で言った。
「────なんか、最近の悠叶さんそればっかっす。それに、悠叶さんには聞かなきゃいけない事が沢山あるんで、覚悟して下さいよ。とりあえず、今はゆっくり体休めて下さい。」
そう言うと、迅鵺はナースコールを押し、悠叶が目を覚ました事を知らせた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
73 / 140