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第七章
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迅鵺の中で、ずっと不可解だった事が全て繋がった。
最初のストーカー行為から始まり、それもエスカレートして・・・
そして、悠叶の強い気持ちが霊(たましい)となり、悠叶の欲望のままに迅鵺は滅茶苦茶に犯された。
二回も現れたかと思ったら、ストーカー行為も襲われる事もピタリと止んで、変わりに生身の悠叶と出会った。
“もし、あの男が悠叶さんだったら・・”
迅鵺は悠叶を許せないし、怒りを抑える事が出来ないと思っていた。
けれど、実際こうして全ての元凶が悠叶だと暴露されたというのに、何故か迅鵺はホッとしていた。
やっぱり、悠叶は響弥が言うようなただの悪人ではなくて、迅鵺のよく知っている人間らしい悠叶のままだったからだ。
迅鵺は、盛大な溜め息を吐くと席を立ち、バチンッと立派な音を立てて悠叶の顔を再び両手で挟み込んだ。
悠叶は“いだいっ!”と声を上げ、痛みにしかめて閉じた瞼をゆっくり開くと、少し涙目になった瞳で目の前の迅鵺の顔を見詰めた。
「───悠叶さん、俺思ったより怒ってないみたいっす。でも、自殺しようとした事は許せません。」
迅鵺は、真っ直ぐに悠叶を見て言った。けれど、悠叶は慌てて首を振る。
「ちっ、違いますっ!俺は自殺しようとした訳じゃ──・・」
咄嗟に否定した悠叶だけど、自信がなさそうに声を小さくさせていく。
迅鵺は悠叶の頬から手を離すと、椅子に腰を下ろす。
「えっ、自殺だったんじゃないんですか?」
一度は否定したものの、悠叶は少し後ろめたい気持ちで、ぽつりと呟くように口を開いた。
「───いえ、あれは、たまたま事故に遭っただけです。でも、俺はもう生きていても意味がない、迅鵺さんを失ったらまた孤独になってしまう・・俺は、生きているだけで罪なんだと思ってしまいました。それに、迅鵺さんを殺したら俺も死ぬつもりだったんです・・・だから、あれは自殺みたいなも──」
「だったらっ!自殺なんかじゃありません。実際に死にたいと思ったとしても、行動しなければ自殺にはならないじゃないっすか!」
迅鵺は、悠叶の話を中断させて捲し立てるように言い放ったが、何か引っかかることがあるのか、“ん?”と首を傾げた。
「ちょっと待ってください。俺を殺して自分も死ぬつもりだったんすか?」
迅鵺の迫力に気圧されがちだが、迅鵺の問いに頷いて肯定の意を示した。
「それは大バカ野郎だ。」
「えっ───・・」
「悠叶さんは大バカ野郎だ!!そんな方法しかなかったのかよ?!話してくれれば良かったんだ。俺は聞きましたよね?なんでこんな事するんだって!」
迅鵺なりに悠叶のことを考えてきた。
確かに、迅鵺も自分を守る為だったり逃げていることもあったが、それでも迅鵺に接してくれていた悠叶のことを嫌ったことは無い。
それどころか、悠叶の不器用な優しさを知っている。あの迅鵺を襲った男の事を考えると不安や恐怖心は出てきたが、それでも目の前に居る悠叶のことは人間として好きだった。
そうでなければ、自分を殺そうとした人間の元へ、わざわざ自ら出向かないだろう。
思いもよらない迅鵺の言葉に、悠叶は思考停止したまま迅鵺を驚いて開かれた目で見詰める。
「あ、あのっ──・・まさか、そんな風に言ってくれるなんて・・」
涙を流しながら“ごめんなさい”と何度も何度も繰り返した。
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