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第八章
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「───お邪魔します。」
元々、検査結果で異常が無かった悠叶は、話終えてから退院手続きを取り悠叶のアパートへやって来た。
「迅鵺さんの部屋に比べたら部屋もボロいし、ちょっと散らかってますけど好きに寛いで下さい。」
悠叶は、自分の部屋に迅鵺が居る事に喜びが隠せないようで緩んだ笑みを浮かべていて、迅鵺の部屋と違い過ぎるからか、少し恥ずかしそうでもある。
利き腕の右腕を骨折している悠叶を気遣って、アパートまで着いてきた迅鵺は、玄関と同じスペースにあるちゃぶ台の上にコンビニの袋を置いた。
「それにしても、悠叶さん家ってこんなに近くだったんですね・・・」
話を聞かされた時に聞いていたが、予想以上に近くて驚いてる迅鵺に、悠叶は少し気まずそうに相槌を打つ。
「それより、迅鵺さん開店時間まであんまりないんじゃないですか?俺なら大丈夫だったのに・・・」
「少ししたら出ますよ。それに、そんな薄情な事しませんから。」
そう言うと、コンビニの袋からいちご牛乳を取り出し、飲み口を開けてストローを差す。
「弁当は、開けられますよね。食いづらいだろうけど、フォークとかスプーンで食って下さい。」
迅鵺の気遣いが余程嬉しかったのか、悠叶はボロボロと泣き出した。
「───ちょっ!?な、何泣いてんすかっ!」
いきなり泣き出すものだから、迅鵺はギョッとするものの“あ~もうっ!”なんて言いながら、夢と同じように袖を伸ばして握り、悠叶の顔を少し乱暴に拭く。
「────夢っ・・みたいでっ・・こんな、日が来るっ・・なんてっ、幸せ過ぎてっ・・どうにかなってしまいそうですっ・・」
悠叶はデカイ図体で突っ立ったまま、ぐしゃぐしゃに顔を歪ませて、ひっきりなしに涙を流した。
「────そろそろ落ち着きました?」
ティッシュで鼻をかむ悠叶に声を掛けると、コクンと悠叶は頷いて、ちゃぶ台を挟んで向かい合わせに二人は座った。
「悠叶さん、今回の事なんすけど響弥さんに話してもいいですか?」
迅鵺は、ずっと心配してくれてお世話になった響弥には、全部話しておきたかった。それに、悠叶の事を誤解されたままでいて欲しくなかったのだ。
けれど、迅鵺の口から“響弥さん”と聞き取った瞬間、悠叶はあからさまに嫌な顔をした。
「────俺、あの人キライです・・」
鼻をかみすぎて真っ赤になった鼻を啜りながら、不機嫌な声を出す悠叶。
「まあ・・・二人は不仲だとは思ってましたけど・・やっぱ嫌っすか?響弥さんは一番世話になった人だし、悠叶さんの事をちゃんと知って欲しいって思ったんです。」
迅鵺の言葉の意味を理解した悠叶は、少し困った顔をした後、しゅんと落ち込んだように眉を下げた。その顔は、少し滑稽だ。
「────そのっ、迅鵺さんの気持ちは嬉しいです・・でも、あの人は迅鵺さんの事が・・・」
なんとなく言いたくない悠叶は、語尾をあやふやにさせている。
「響弥さんが、俺の事を好きだって言いたいんですか?」
思ってもいなかった迅鵺の言葉に驚きの表情を見せる悠叶だが、諦めたように頷いた。
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