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第八章
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部屋に上がると、昨日来た時と同じちゃぶ台にコンビニの袋を置いて座る迅鵺。
悠叶は、キッチンがある部屋に付いている引き戸の向こう側に行き、眼鏡を掛けて迅鵺がいるキッチンのストーブを点けると迅鵺の向かい側に座った。
「すぐ暖かくなるんで、ちょっと待って下さいね。」
悠叶が座ったのを確認した迅鵺は、袋の中身を取り出していく。
ちゃぶ台の上に広げられたのは、コンビニで買ったホールケーキにフライドチキン、お菓子やシャンパンといったクリスマスらしい食事だった。
そして、悠叶が好きだと言って買っていたいちご牛乳も。
それらを目にした悠叶は、嬉しさと驚きのあまり声も出せないといった様子で、言葉を詰まらせている。
「あっ・・えっと、あのっ・・」
「ちょっ、何泣いてんすか!?ほんっと、悠叶さんて泣き虫だったんすね。」
結局、言葉は出てこなくて、変わりに涙が出てくる悠叶。
迅鵺は、微笑ましくも少し呆れたように言って、目の前の食事を食べやすいように封を開けて悠叶の前に置くと、シャンパンを棚から取り出したグラスに注ぐ。
「悠叶さん酒弱いけど家だし、たまにはいいっすよね?まあ、格好つかないグラスですけど、乾杯しましょう。」
悠叶は、腕で涙を拭きながら頷くと、グラスを手に持ち、迅鵺のグラスと軽く触れ合わせる。
グラスは“カチン”と心地好い音を響かせた。
「俺、こんなに幸せなクリスマス初めてです・・」
落ち着いてきたとはいえ、泣いた事が明らかな悠叶の表情は、幸せそうに淀みのない笑顔を浮かべている。
「───そっすか・・まあ、沢山食って下さい。贅沢なんてしてなさそうな悠叶さんが毎週通ってくれてた事に比べるとちっぽけっすけどね。」
たかだかクリスマスくらいで涙ながらに笑顔を見せる悠叶に、迅鵺は自分なんかが想像出来ない程、悠叶の過去は辛いものだったんだなと胸を痛めた。
取り皿に盛られたコンビニの料理を美味しそうに食べる悠叶を見ていると、自分が悩んでいる事が小さな事に思えてきて迅鵺は複雑な心境だった。
そんな想いを振り払うように、グラスに入ってるシャンパンを飲み干す。
いつの間にか、二人は今までのように普通の在り来たりな会話を楽しんでいて、気づくと時刻は九時を過ぎていた。
「迅鵺ひゃん、ちょっと、といえに行ってきましゅね・・」
そう言って覚束無い足取りで、トイレに入ってく悠叶。
「まあ、分かってましたよ。今日は、酔っぱらいの世話かな・・・」
ははっと笑いながら一人言を零す。
なんとなく、先程悠叶が眼鏡を取りに行った部屋の引き戸が目に入り、隙間が開いていることに気付く。気になった迅鵺は部屋の前まで来ると引き戸を開けて覗いた。
「─────なっ!?なんだ・・これ・・・」
とんでもない部屋の様子に、ギョッとする迅鵺。
少しだけ覗くつもりだったのに、つい引き戸を全部開けて中へと入ってしまう。
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