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第八章
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どうやら悠叶のアパートは1DKで、キッチンとこの部屋で造られた間取りみたいだ。
迅鵺が踏み入れた部屋にはベッドが一つ置かれていて、窓は黒いカーテンで覆われ部屋は真っ暗になっている。
あまり広い部屋ではないが、カメラ関係だと思われる器材がいくつも置かれていて、カメラマンらしい部屋なのだが・・・迅鵺の写真が部屋中に貼られていたのだ。
迅鵺の写真は見た事がある物からない物まで、壁や天井にビッシリと貼られていて、部屋の角の方には掛けられてる紐に洗濯バサミで吊るされている写真まである。
「おいおい・・流石に、ここまでとか想定外──・・」
あまりの光景に息を呑む迅鵺だが、圧倒されて一歩後ずさった所で背中に何かが当たった。
「────見ちゃったんですね・・迅鵺さん。」
至近距離での声に、心臓を飛び上がらせる迅鵺は慌てて振り返った。
そこには、トイレから出てきた悠叶が立っていた。
「は、悠叶さん・・ちょっとこれ、流石にヤバくないですか?」
まだ、暴れている心臓を誤魔化しながら言う迅鵺だが、悠叶は首を傾げた。
「そうですか?───・・俺は、どえも気に入っているし、こんなに迅鵺しゃんに囲まれて幸せでしゅよ?」
うっとりと目を蕩けさせて部屋を見回す悠叶は、まだ酔っ払っているようだった。
悠叶は迅鵺の目線を絡めとるように迅鵺の顔を見詰める。
「なっ、なんすか?悠叶さん、目がすわってます・・」
迅鵺の声が聞こえているのか聞こえていないのか、悠叶は無言で迅鵺に骨折していない左手を伸ばし、迅鵺の首の後ろに腕を回す。
迅鵺は、すっぽりと悠叶の胸の中に収まってしまった。
「ちょっ、ちょっと悠叶さんっ!?腕、痛くないんすか?」
骨折している右腕がお腹の所で当たっているのに気付き、悠叶の右腕を気遣って悠叶から離れようともがくが、怪我している人がこんなに力が強いものなのかと思ってしまうくらい、悠叶はしっかりと迅鵺を抱きしめている。
悠叶から逃れようと四苦八苦していると、足元にあった積み重ねられている雑誌に迅鵺は足を引っ掛けしてしまい、後ろにあったベッドに二人一緒に倒れ込む。
「───うわっ!」
ドサッと音をたてて悠叶の下敷きになる形でベッドの上に寝転んでしまう迅鵺。
「─────つぅ、大丈夫っすか?はる、と、さん・・」
思ったよりも、近くにあった悠叶の顔に驚いて、迅鵺は黙り込んでしまった。
ち、近い・・悠叶さんの睫毛の数まで数えられそうだ・・・
迅鵺は、夢でのキスを思い出してしまい、みるみる顔が赤くなっていく。
お、おいっ俺っ!何ドキドキしてんだよっ!?やめろって、鳴り止めよっ・・・
迅鵺は、自分の騒々しい心臓の音に誰が聞いてる訳でもないのに悪態吐くが、そんな余裕さえも奪われていく。
悠叶の顔が更に近付いてきたのだ。
えっ!?ちょっ・・ま、待って・・悠叶さんっ───・・
迅鵺は、更に暴れる心音に最早構う余裕もない。
“キスされるっ”
そう思った迅鵺は、咄嗟にギュッと目を瞑った。
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