アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第八章
-
*****
「──────んっ・・」
なんだ?なんか今、唇に柔らかいモノが触れたような・・・
迅鵺は、違和感を感じて重い瞼を開けていくと、悠叶の顔がドアップで目に飛び込んできて、眠たくて閉じそうだった瞼は驚いて目一杯開かれる。
「うわあっ!?と、迅鵺さんっ!?」
明らかに動揺して挙動不審な目の動きや、顔まで赤くしている様子に迅鵺は呆れて溜め息を吐く。
「───まったく、なんで悠叶さんがビックリしてんすか・・俺だって声上げそうになるくらいにはビビったのに、なんか拍子抜けっすよ。」
迅鵺の言葉に“うっ・・”と、喉から声を漏らし体を硬直させる悠叶。
どうやら、キッチンを片付けた後に眠ってしまっていたようで、寝室の地べたで寝ていた迅鵺に目を覚ました悠叶が毛布を掛けてあげたようだ。
「ご、ごめんなさい…本当はベッドに運んであげたかったんですけど…」
「いや、今の悠叶さんの腕じゃ無理っしょ。大丈夫っすよ。」
挙動不審な上に、眉を下げて申し訳無さそうな悠叶の様子をじっと見る。
「───で、人の顔覗いて何してたんすか?」
悠叶は、なんて言うべきなのか迷っている様子で、またもや目線をあちこちに泳がせ、挙動不審だ。
そんな悠叶に、二度目の溜め息を吐く迅鵺。
「────俺の寝込みを襲いましたね?」
「へっ!?ね、ねね、ねっ・・寝込みをお、襲うだなんて・・・って、似たようなものですよね・・すみません。き、キスしたのバレちゃいましたね・・・」
迅鵺に言われて狼狽える悠叶だが、降参したように肩を落とすと、キスをしたと認めた。
迅鵺の反応が気になるのか、俯き加減な悠叶はチラチラと上目遣いで迅鵺の様子を伺っている。
けれど、迅鵺の予想外な言葉に悠叶は首を傾げた。
「────何を今更・・何度もしたくせに・・・」
「えっ・・それって、どういう意味──」
迅鵺の言う事が分からなくて悠叶は聞き返すけれど、迅鵺の手で口を塞がれてしまい、途中で途切れてしまう。
迅鵺は、毎日みていた悠叶の夢のことを思い出していた。
「な、なんでもないっす・・・」
そっぽを向いて顔を赤くしている迅鵺に、悠叶は堪らなくなって胸を甘く締め付けた。
自分の口を押さえている迅鵺の手首を左手で掴むと、自分に引き寄せる。
「な、なんかよく分からないですけど、とりあえず迅鵺さんが可愛いです・・・」
そう言って、迅鵺の頭部に口付けを落とした。
「はあっ!?───か、可愛いとか言わないで下さいっ!」
咄嗟に悠叶の腕の中から逃れてベッドから立ち上がる迅鵺。
その顔は、眉はつり上がってはいるが顔を真っ赤にさせていては全く迫力がない。
恥ずかしさのあまり、居たたまれなくなった迅鵺はバタバタと慌ただしく玄関まで行くと靴を履き始める。
「ちょっと、迅鵺さんっ!?」
帰ろうとする迅鵺を追って来た悠叶に、迅鵺は振り返ると荒々しく言い放った。
「飯は、今朝のが冷蔵庫にラップして入ってるんで、チンして食って下さいっ!それじゃあ、俺は帰るんでっ!」
そう言ってドアを開けた迅鵺は、もう一度振り返り思い出したように付け足した。
「そっ、それから部屋中の写真っ!あれ恥ずかしいんで取って下さい!それと、お店にはもう来なくていいですからっ」
そうして、今度こそ悠叶の部屋から出ていった。
取り残された悠叶は、嵐のような出来事に一言も発する事が出来ずに立ち竦んでいる。
「───え、えっと・・色々聞きたいけど、なんでお店に行っちゃいけないんですか?」
嵐の後の静けさの中で、少し落ち込む悠叶であった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
92 / 140