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第九章
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迅鵺は、この状況をどう説明するか脳をフル回転させるが、響弥には見抜かれそうな気がして動けないでいると再び声が聞こえてくる。
「迅鵺っ、居るんだろ!?」
焦っている迅鵺に追い打ちを掛ける。
そんな迅鵺の様子に悠叶は優しく微笑んで、頭をポンッと撫でると、手を引いて立ち上がらせ迅鵺の耳元にまだ熱が残る声で囁いた。
「とりあえず下着を履いて下さい。俺がなんとかしますから。」
ボッと赤面した迅鵺がドキドキを隠すように少し乱暴に下着を履いて乱れたドレスを直す。
迅鵺の身嗜みが整ったのを確認してから悠叶はトイレのドアを開けた。
「やっと、出て来た──か・・って、アンタかよ。」
悠叶の姿を見るなり、あからさまに嫌そうな顔を見せる響弥。けれど、それはお互い様。悠叶も敵意剥き出しな表情で口を開いた。
「長いこと迅鵺さんを一人占めしちゃって、すいません。ちょっと気分が悪くなったんで介抱してもらってたんです。」
悠叶に続いて迅鵺がトイレから出て来たのを見て、響弥は顔をしかめた。
迅鵺も話を合わせてはいるが、ずっと迅鵺を見てきた響弥は、迅鵺の様子がおかしい事に気付いたからだ。
「────まあ、それなら、しょうがねえな。迅鵺、客が待ってる。早く行け。」
響弥の言葉に返事をすると、迅鵺は悠叶に頭を下げて、待っているお客の元へと向かった。
トイレの前の通路に残された悠叶と響弥の間には、ピリピリとした空気が漂っている。
「────その格好、わざわざ迅鵺さんとお揃いにしたんですか?当て付けにしか見えないんですけど。」
ピリピリとした険悪な沈黙を破ったのは悠叶。
「んな訳ねぇだろ。───これは、迅鵺に無理やり着せられたんだ。」
機嫌がかなり悪そうな響弥の格好は、あの雪の女王の妹の衣装だった。雪の女王が綺麗系なら黒と緑色で合わされた妹の衣装は可愛い系。
迅鵺に仕返しをくらったという訳だ。
そういう事情があるにせよ、悠叶からすればお揃いに見えて面白くない。
悠叶の機嫌もかなり悪くなった。
「言っておきますけど、あなたに迅鵺さんは渡しませんから。」
そう言って、響弥の脇を通り“邪魔しないで下さい”と、一言ボソッと呟いていった。
「────どこが、気分悪いんだよ・・元気じゃねぇか・・・」
響弥は、悠叶の後ろ姿を見ながら舌打ちをする。
「─────クソッ・・覚悟はしてるつもりだけど、ツレぇもんだな・・よりによって相手がアイツとか勘弁しろよっ・・・」
響弥は、トイレ前の通路で暫く一人佇んでいた。
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