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第十章
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「────へっ?だ、だってあの時、凄い仲良さそうだったし・・・響弥さん俺に見せ付けるように迅鵺さんにキスしたんですよ?」
悠叶は、ぽかーんと気の入ってないような物言いで、昨日の響弥の様子を話す。
迅鵺は、あの意地悪な響弥の顔を鮮明に脳裏に浮かばせると“ああ~・・”と力無く声を漏らし、響弥ならやりかねないと納得したようだ。
「────すいません。多分それ、ただの嫌がらせです。俺、昨日は悠叶さんのことを相談してたんすよ?それで、響弥さんもちゃんと認めてくれましたから。」
迅鵺の言葉に悠叶は暫く固まっていたが、次第にワナワナと怒りが湧いてきたようだ。
「アイツ、絶対に許さないっ!!」
悠叶は、キッと目に力を入れて言って、直ぐにホッとしたように力を抜くと、今度は期待に満ちた表情で涙のせいか、キラキラと輝いて見える。
「じゃ、じゃあ、響弥さんとは何もないんですねっ!?」
だけど、迅鵺は“うっ・・それは・・”と、歯切れの悪い言葉を溢して、ばつの悪そうに顔を背けた。
以前に、響弥に襲われているからだ。
そんな様子の迅鵺に、悠叶は再びウルッと涙を瞳に滲ませた。
「や、やっぱり何かあるんですね!?」
ビービーと泣く悠叶に、迅鵺は諦めて洗いざらい話した上で、響弥が手を出してくる事はないと説得する。
「────だから、安心して下さい。なんだかんだ響弥さんは、悠叶さんのことも分かってくれてますから。」
「あ、安心なんて出来ませんっ!あ、あの人は無理やり迅鵺さんを襲うような人なんでしょ!?」
以前にも似たようなやり取りをしたような気がするが、悠叶の正論ぽい言葉に“悠叶さんもあまり人のこと言えない”と内心で思いながら、迅鵺はその場に立ち上がった。
いきなり立ち上がった迅鵺に、悠叶は点になったような目を迅鵺に向ける。
そんな悠叶の背後に回ると、迅鵺は後ろから悠叶を抱き締めた。
「悠叶さん、安心して下さい。────俺が好きになったのは悠叶さんなんですから。」
迅鵺の言動に、悠叶は頬を赤らめて胸をトキめかせた。
胸の前まで回された迅鵺の腕に左手で触れると、悠叶は心底幸せそうに“はいっ・・”とだけ言った。
胸がいっぱいになり過ぎてしまって、その短い一言を口にするのが精一杯な様子だ。
今まで悠叶を苦しめてきた過去。
ずっと孤独だった、苦しかった。
好きになった人と通じ会える、こんな日が来るだなんて、悠叶にとっては夢のような出来事。
今までの様々な辛かった事が、迅鵺によって溶かされるように温まってく心に、悠叶は涙が止まらなかった。
「俺、生きてて良かった──・・迅鵺さんに会えて良かったですっ──・・」
感無量とは、こういう事なのかと悠叶は思った。
悠叶にとって迅鵺の存在は、それくらい大きなモノで、何度も迅鵺から幸せだと思う瞬間を貰ってきたけれど、この日はそのどれにも勝る幸せを、心から噛みしめた。
「迅鵺さんっ・・好きです、愛してますっ・・・」
「─────はい、俺もですよ。」
悠叶が泣き止むまで迅鵺はずっと、悠叶を抱き締めていた。
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