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番外編
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Club TOP SEACRETの主任となった迅鵺は、以前にも増して忙しくしていた。
金曜日の店内は相変わらず賑わっていて、迅鵺もいつものようにお客に接している。
「ねぇ、迅鵺~今日はホテル行こうよ~」
「今日は行かねぇよ。もっと自分を大事にしろって、な?」
「・・・主任ってそんなに忙しいの?」
迅鵺は、悠叶のことを自覚してからというもの、お客を抱くことを辞めていた。
厳密に言うと、悠叶の生霊に犯された痕跡が身体にある時も避けていたので、もっと前からなのだが、今まではここぞと言う時にはお客を抱いていたので、最近チラホラと不満を漏らすお客が出てきたのが、最近の迅鵺の悩み。
勿論、主任の仕事にはまだ完璧に慣れた訳でもなく、覚えることや気を遣う場面はいくらでもある訳で、忙しいことは本当なのだが、悠叶のことを考えると、これから先お客を抱くことは出来ない。
いや、何よりも迅鵺自身が抱けなくなってしまった。
常に悠叶から刻まれた痕跡が身体中にあるというのもあるのだが、気持ち的にも抱きたくないという思いがある。
だが、ホストとしての誇りが迅鵺にはあった。
お客に不満に思われていては、一流ホストとして失格であり、その不満を放置していれば勿論、売上にも影響が出てくるだろう。
それを、悠叶や忙しいせいにしたくなかった。
「まだ完璧にはこなせてねぇよ。なんせ、あの響也さんの後を継がせて貰ったからな。愛花には寂しい思いさせちまってごめんな。」
今は、まだこの理由でお客も納得してくれるが、いつまでもそうはいかないだろう。
それは、迅鵺が一番分かっている。
主任になったことを機に、更にホストとしてワンランク上に行こうと、密かに目標を抱いていた。
「ちょっと行ってくるな。お利口さんにしてろよ。」
そう言って、お客の頭を撫でて別の席へと移動する。
「───っ!迅鵺さん、おかえりなさい。」
「ただいま、悠叶さん。」
相変わらず悠叶は金曜日になると足を運んでいた。
迅鵺が戻ってくるなり、悠叶は何故だかソワソワと落ち着かない。
「あ、あのお客さん、いつも居ますよね・・・なんて言うか、いつも距離が近いっていうか、ベタベタしすぎって言うか・・・」
どうやら、先程のお客の距離感に嫉妬しているらしい。
「やっぱ嫌っすよね。ああいうの。」
「えっ?あ、まあ・・嫌は嫌です・・」
予想外の返答に戸惑う悠叶だが、要するにそういうことだ。
悠叶なりに、迅鵺の仕事のことは理解しているつもりだが、感情というものは反射的に感じてしまうものだし、筋トレみたいに鍛えることもなかなか難しい話だ。
「まあ、正直な話ここはホストクラブなんで、あれくらいは我慢させちまうかも・・」
「そう、ですよね・・困らせてすいません。どうしても、不安になってしまって・・」
迅鵺にとって悠叶の存在は、前よりも大きな存在になっていて、大事な人だ。
出来れば傷付けたくないし、笑っていて欲しい。
悠叶が不安を感じるのであれば、少しでも安心させてやりたい。
「とりあえず、ここではなんだし、後で悠叶さんのアパートでゆっくり話しましょう。」
「はい、ありがとうございます。」
迅鵺の優しさを悠叶はちゃんと感じているようで、先程より表情の緊張は取れたようだった。
この日も閉店まで居た悠叶は、迅鵺の片付けやホスト達のケアを終えるのを待つと言って聞かないので、近くのファミレスで待って貰うことにした。
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