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番外編
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「お待たせ。」
「迅鵺さん、お疲れ様です!」
店を出る時に悠叶にLINEをしておいたので、悠叶は会計を済ましファミレスの外で待っていた。
「じゃあ、帰るか。」
「あ、あの、迅鵺さん、公園に寄っていきませんか?」
帰ると言った迅鵺に、そんな提案をする悠叶。
たまには、外の空気に触れながら話をするのも良いかもしれない。そう思った迅鵺は、快く承諾した。
迅鵺よりも背が高い悠叶の歩幅は大きく、迅鵺の隣で歩幅に合わせて歩いてくれているのが分かる。
二人はマンション近くの公園に着き、ベンチに隣り合わせに座った。
「悠叶さんは、何が不安ですか?」
自分以外の人とベタベタしていれば、誰でも嫌だろう。
だが、迅鵺の仕事ではそれが仕事だったりもする訳で、それは悠叶も分かっている。
その上で、何が不安なのかを迅鵺は伺った。
「・・・迅鵺さんは、本来はノンケですよね?」
「ノンケ?」
「───ノンケっていうのはゲイとかではないノーマルの人のことです。」
ノンケという言葉を知らないくらい、同性愛者の世界を知らないという事実。
そのことが、一番の悠叶の不安事だった。
「あ~そうですね。俺は元々ノーマルだし、正直有り得ないって思ってたくらいでしたから・・」
「・・・ですよね。俺は時々、やっぱり迅鵺さんを巻き込んでしまって、本来ならもっと良い恋愛や未来があったんじゃないかって思ってしまうんです。」
「はあ?今更なに言ってんすか。有り得ないって思ってたくらいなのに、それでも悠叶さんを選んだってことじゃないっすか。」
迅鵺から言わせれば、それくらい好きだと言うことだ。
けれど、ノンケの恋人を持つ側としてはよくある悩みで、どうしても不安に感じてしまうこともある。
「それは分かってます。でも、迅鵺さん、俺とのことをご両親に話せますか?」
「そ、それはっ───」
「すいません。困らせたい訳じゃないし、ご両親に話して欲しい訳でもないんです。ただ、普通だったら男女で結婚して子供が出来て、それをご両親は喜んでくれるじゃないですか。」
悠叶は迅鵺を責めたい訳でもないのに、不安からかついヘビーな本音が出てきてしまう。
「迅鵺さんは、子供は欲しくないんですか?」
悠叶なりに、色々と迅鵺のことを考えていたのだろう。
もしかしたら、迅鵺の幸せを奪ってしまったのではないか、いつか自分以外の人と一緒になってしまうのではないかと。
「あ~俺、子供は割と好きだけど結婚すら考えたことないからな。今は悠叶さんのことが好きなんだし、それに客には女として魅力を感じたことは1回もねぇよ?」
それじゃダメなのか?と迅鵺は聞くけれど、悠叶の中では色々と複雑なようだ。
「それは、凄く嬉しいです。お客さんのことも理解はしてるつもりです。ただ・・」
「───ただ?」
「ずっと迅鵺さんと一緒に居れたらいいのにって・・いつか他の人と結婚して子供が出来てって、そんな時が来たらどうしようって・・・すいません。いつも俺のことばかりなんです。」
本気で悩んでいる悠叶なのだが、隣で盛大なため息が聞こえてくる。
「あのさ、悠叶さん。それって男同士だろうが男女だろうが同じじゃね?」
迅鵺の言葉が上手く理解出来ないようで、首を傾げる悠叶。
「男女のカップルだったら100パーずっと一緒に居れんの?そうじゃねぇだろ?だったら、俺たちが決めればいいだろ。ずっと一緒に居てぇなら居ればいい。その為に必要なことがあるなら努力すればいいんだよ。」
「───っ、た、たしかに・・そう、ですよね。」
迅鵺らしい考えだろう。悠叶にはなかった考え方で、迅鵺の考えにはいつだって翻弄されてしまう。
「迅鵺さんって凄いですよね・・本当にかっこいいと思います。」
「なっ、なんだよ、いきなり・・」
いきなりかっこいいだなんで言うものだから、迅鵺はちょっと照れくさくなってしまう。
「迅鵺さんは、いつも俺に勇気をくれます。出会った時からずっと───」
悠叶は、柔らかい表情で笑って迅鵺の頬に触れた。
「ありがとうございます。俺も頑張ります。」
「お、おう・・安心してくれたなら良かったよ。」
悠叶の素振りにドキドキしながら答えた。
二人は自然と引き寄せられるように唇と唇が合わさる。
「あ、あのさ、悠叶さん。」
「なんですか?」
「さっきはすぐ答えらんなくてごめん・・親に話せるって言えなくて。」
「ああ、それは別に良いですよ、本当に。」
迅鵺は、悠叶を傷付けたのではないかと内心思ってしまっていて、迅鵺なりに考えていたことを悠叶に打ち明ける。
「あのさ、悠叶さんの言う通り、確かに直ぐには話せる勇気ないっす。でも、いつかは知って欲しいっつーか、やっぱり悠叶さんのこと認めて欲しい気持ちはあるんです。」
「迅鵺さん・・・」
「だからさ、ちょっと時間はかかるかもしんねぇけど、頑張らせてよ。悠叶さんとのこと、努力したいって思ってるんですよ、俺だって。」
「───っ、もう、十分幸せです・・ありがとうございます。嬉しいです。」
きっとこれからも、嫉妬してしまう瞬間や不安になってしまう瞬間も出てきてしまうかもしれない。
それでも、この時の悠叶は幸せで胸がいっぱいで、さっきまであった筈の不安がなくなっていた。
「───そろそろ帰るか。」
照れくさくて居た堪れなくなったのか、迅鵺はそう言って立ち上がり、悠叶に手を伸ばした。
「ほら、行くぞ。」
「───はい。帰りましょうか。」
迅鵺の手を取り、二人はマンションへと帰っていった。
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