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これは1年も前に遡る。
ザアザアと降り注ぐ雨の中、1人の青年が傘もささずに小走りしていた。
「何で僕が委員長なんて……しかも施設に傘置いてきたし今日は最悪だよ……」
そんなことをぼやきながら小走りを続けていると、黒い何かにぶつかり、どしゃっと音を立てて盛大に尻餅をついてしまった。
「いっ……!す、すみません!前を見てなくて!」
青年は慌てて顔を上げて謝る。
そこには深く蒼く長い髪を1つに結った長身の男性が見下ろしていた。
「こちらこそすまなかった。大丈夫か?」
「は、はい。大丈夫です……」
差し出された手を青年は恐る恐る取り、男性の力を借りて立ち上がった。
「お前、こんな雨の中で傘もささずに何をしているんだ」
「えーと……あはは……施設に傘置いてきちゃってて……」
「施設……?」
青年の言葉に男性は眉をひそめた。
「はい。子供の頃に両親を亡くしているので施設育ちなんです。でも、もう高校生だからそろそろ出ようかなって考えてて。荷造り始めてたから傘もしまっちゃってて」
困ったように、悲しそうな笑顔で青年はそう答えた。
「では、うちに来たらどうだ」
「えっ?でもそんな、初対面で迷惑では……」
「心配ない。他に使用人が2人居るだけで、無駄に広いからもの寂しいと思っていたところだ」
男性の話にきょとんとした後、青年は考え込み始めた。
「悩むなら、そうだな。一度うちに来るといい。それで決めたらどうだ」
「え、良いんですか?」
「構わない。どうせそのまま帰るのも何だろうから、今すぐ行こう」
「え、ええ?!ちょっと?!」
青年の答えを聞く前に男性はひょいっと抱き上げた。
唐突な行動に青年は困惑してきょろきょろと周りを見渡したり、じっと男性の顔を見詰めたりとあたんたしている。
「しっかり掴まっていろ」
「は、はい……?」
青年が慌てて男性の首に手を回すと、それを見てから歩き出した。
暫く歩いた後、人気のない所まで行くと急に高く飛び上がり、屋根の上に飛び乗った。
そしてそのまま駆け抜けていく。
あまりにも現実離れしたこの状況に青年は目を白黒させて硬直していた。
走り続けて恐らく5分程経っただろうか。
男性は森の奥に入り、大きな館の目の前に立つと青年をゆっくり下ろした。
「着いたぞ」
「こ、ここ……?」
大きな門を開き、男性は青年の手を引きながら歩いていく。
「帰ったぞ」
男性がそう声をかけると、ギィと重い音を立てて扉が開いた。
「お帰りなさいませ、主人」
2人の男性が頭を下げていた。
片方は赤い髪を1つにまとめた男性。
もう片方は青い少し長めのショートヘアの男性。
「すまないが、この者を風呂に入れてやってくれ」
とん、と背中を押され、前に出される青年。
「あの、こちらの方は……?」
青髪の男性が怪訝そうに問いかけてくる。
「先ほど道で拾った。これからはうちに住まわせるつもりだ。名は……そうだ、まだ聞いていなかったな」
「えっと、叶弥です……」
「叶弥か。俺は蒼(そう)だ。炎(えん)、お前は叶弥に代わりの服の用意を、氷(ひょう)は風呂に入れてやってくれ」
「かしこまりました」
2人は躊躇う素振りもなくそれを聞き入れると、炎と呼ばれた赤髪の男性はさっさと奥に引っ込んだ。
「さあ、叶弥様。此方へ」
氷と呼ばれた青髪の男性は叶弥を促して、先を歩き始めた。
未だにこの状況を飲み込めないまま、促されるまま後をついていく。
「あ、あの、急に来てしまって……その……」
「お気になさらないでください。主人の思い付きには慣れておりますから」
淡々としていて、けれど優しい声音で氷はそう返した。
それに少しだけ叶弥はほっとした。
「ごゆっくりどうぞ。私は外で待機しておりますので、何かございましたらお呼びください」
一礼だけして氷は脱衣場を出ていく。
ぽつんと取り残された叶弥は暫く立ち尽くしてから、濡れて気持ち悪い服をゆっくり脱いだ。
「服、どうしよう……床に置いたら床が濡れるし……うーん……」
きょろきょろと見回すと、壁際に籠が見えた。
「ひとまずここに置かせてもらお……」
叶弥は濡れた服をそこに置くと、そろりそろりと浴室への扉を開けた。
広々とした浴室の奥に、小さな旅館を思わせるほどに
は大きい浴槽が鎮座していた。
「ええぇぇえ……お金持ちなのあの人……?」
遠慮したくなる程に豪華で綺麗な浴室に、恐る恐る足を踏み入れた。
もう、叶弥には何が何やらとなっているようだ。
「主人駄目ですって!」
「お前達は食事の用意と寝床の用意を頼んだ」
「はぁ……炎、行きましょう」
「はいはい。主人、絶対気を付けてくださいよ!」
そんな声が後ろで聞こえたかと思うと、誰かの気配がした。
叶弥が何事かと思って振り返ると、がらりと浴室のドアが開き、服を脱いだ蒼が入ってくる。
真っ白な肌で細身ながらしっかりと筋肉のついた身体に、叶弥は思わず固まってしまった。
「あ、あの?!」
「俺も雨で濡れたからな。共に失礼させてもらう」
涼しい顔で蒼はそう言うと、叶弥に目をやる。
蒼程ではないが白い肌と、あまり筋肉のない細い体つき。
まじまじと見詰めた後、蒼はすぐに目を逸らした。
「早く入らないと風邪を引く」
きゅっと蛇口を捻り、お湯を出して叶弥を手招きする。
おろおろとしながら、叶弥は蒼に近づくと椅子に座らされ、お湯を頭からかけられる。
雨で冷えた身体に、お湯の熱が染みていく。
「お前の施設とやらはこちらから連絡を入れておくから安心して泊まるといい」
「ここまでして頂いて……すみません……」
さぁさぁと流れるシャワーの音と、2人の声の響く浴室。
これがお湯のせいなのか、それとも他のものなのか、顔が熱くなるのを叶弥は実感していた。
「じっとしていろ」
手際よく、手早く蒼は叶弥の髪を洗い始め、細く綺麗な叶弥の髪を優しく扱う。
その心地よさに叶弥はぼーっとして大人しく受け入れていた。
もう、訳の分からないことが続きすぎて麻痺してしまい、この状況にさえ疑問を抱けなくなっていた。
「お前の身体は細いのだな」
「えっ……あ、か、身体は自分で……!」
ぼけっとしている間に気付けば洗髪は終わっていて、既にもう身体は泡だらけになっていた。
手で立てた泡を叶弥の身体に付けては、手で撫でるように洗っていく。
蒼の細く骨張った指が、叶弥の首や腰、背中を撫でる度にびくびくと身体を震わせる。
「あ、あの、ほんとに……っ」
「どうした?そんな遠慮をするな」
「でも……っ」
蒼はそんな叶弥の反応を楽しむかのように、しつこく腰や背中を指でなぞり続ける。
「まっ……やぁ……」
「ただ身体を洗っているだけだろう。そんな甘い声を出すな」
「だって……何か変……っ」
何故か、拒絶感も恐怖感も嫌悪感もなかった。
叶弥にあったのはただ得体の知れない快感と、蒼なら何をされても構わないという感情だけだった。
きっと、出会った瞬間に自分は男でありながらこの蒼という美しい男に恋をしてしまったのだと実感した。
「あまり長くすると人間では逆上せてしまうからな。早めに楽にしてやろう」
「楽にって……」
「お前はこういうことは初めてか」
蒼の手は迷わずに叶弥の秘部へ向かい、既に上を向いたソレをゆっくり撫でた。
初めての感覚に、先程よりも身体をびくびくと震わせ、息を荒げる。
叶弥はもう頭の中が真っ白でひたすらに与えられるその快感に身体をびくつかせることしか出来なかった。
「んんっ……そ……さっ……なん……か……っ」
「安心してそのまま委ねろ。大丈夫だ」
その言葉に叶弥は蒼の手に与えられる快楽に身を委ね、白濁としたソレを吐き出した。
肩で息をして、頬を紅潮させて、蒼にもたれかかる。
「まだ、手を出すつもりはなかったんだが……叶弥、少しだけ待っていろ」
叶弥を壁にもたれさせたまま、自分の洗髪などを済ませるとすぐに叶弥を抱き抱えて浴室を出た。
既に用意されていたタオルで叶弥の身体と髪を拭いて服を着せた。
「氷、居るか」
「はい、ここに……主人、あれほど申し上げたはずですが?」
「初めて歯止めが効かなかった。まさか自分が手出しするだなんて思いもしなかったな」
「主人が手を出すだなんて余程お気に召されたのですね。とにかくすぐに水分補給して頂かなくてはなりません」
既に服を着た蒼はそのまま叶弥を抱き抱えて食堂へ向かう。
その間も氷の小言は続き、段々と近付いてくる小言が聞こえてきた炎は、触らぬが仏とばかりに急いで水を用意してから食事の準備の続きに取りかかった。
己の主人には悪いが、巻き込まれたくはない。
「叶弥、大丈夫か」
「平気です……」
冷静になって何てことだと恥ずかしくなった叶弥は顔を真っ赤にして小さな声で答えた。
その様子を見た炎と氷は顔を見合せてから、お互いに分かる程度に口元を綻ばせた。
「叶弥様はここにお住みになられるということでよろしいですね?」
氷がじっと叶弥を見詰めると叶弥は少し迷った後にこくりと頷いた。
それに驚いたのは蒼の方だった。
「意外だな。断られるとばかり思ったのだが」
「あんなことして受け入れてもらえるなんて良かったですね!主人!あでっ!」
言い終わると同時辺りに、氷が炎の後頭部を思い切りはたいた。
「その、嫌じゃ……なかったので……」
「……そうか」
叶弥の言葉にただ、静かな微笑みとその一言だけを蒼は返したが、その声はとても優しく、そして安堵していた。
そうして、その日は叶弥は蒼の家に泊まり、数日後には手続きを済ませて蒼の家に住むこととなった。
「ああ、そうだ叶弥」
「何ですか?」
「俺が吸血鬼というのはまだ伝えていなかったな」
「へっ?!」
「安心しろ、人間を早々襲ったりなどしない」
「……他の人の血なんて飲まないでくださいね」
「血が欲しくなったらお前に頼むとしよう」
こうして2人と2人の共同生活が始まった。
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