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壱
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私立空名学園高等部。ここは県内でもトップクラスの男子校。通う生徒達は皆、何かしらに優れたものばかりが集まっている。
この空名学園には黒い蝶と呼ばれる生徒と、藤の花と呼ばれる生徒が存在する。どちらも生徒の間で勝手呼ばれているだけの異名ではあるが、その名にはそれぞれへの憧れが込められたものだ。
2人の男子生徒が校門をくぐった瞬間、ざわめきが大きくなる。
鴉の濡れ羽の様に黒く艶のある髪をミディアムまで伸ばし、外に跳ねさせた髪型。ブラックダイヤモンドを彷彿とさせるような濡れた瞳。陶器の様に白く艶やかな肌と薄く艶やかな少し赤みを帯びた唇。端整で色気の溢れた顔立ちと180cmもある細身の長身。
歩くだけで人を魅了する彼の名前は[[rb:黒羽蝶瑚 > くろばねちょうご]]。名を体現するかの様に存在そのものが優雅で、まるで蝶が舞う様な姿から、名前をもじって黒い蝶と異名がついた。
そして、蝶瑚の隣を歩く男子生徒。
白みがかったような紫色のストレートの髪をミディアムに伸ばし、さらさらと揺らす。アメジストの様にキラキラとした瞳に、ビスクドールの様に白く美しい肌。薄く小さな桜色の唇。愛らしさの中に艶を見せる顔立ちと177cmという蝶瑚に引けを取らない長身。
そこに存在するだけで華が舞うような彼の名前は[[rb:華城藤真 > はなしろとうま]]。
その髪色と瞳の色、そして華のある存在感から、名前に含まれる藤をとって藤の花という異名を付けられた。
2人はこの空名学園で知らぬ者は居ないとされる程の有名人で、憧れの的でもある。同性である他生徒の中には想いを寄せる者も少なくはない。恋愛感情でなくとも、そこに憧れなどを抱く者も多い。
常に学園では注目の的であり、絶対的な憧れの象徴だ。
「藤真、課題やった?」
「ああ、やったよ。確か1限目だったね」
「1限の授業で回収するって。……昨日は藤真が可愛かったから、危うく課題を忘れるところだった」
「恥ずかしいこと言わないでよ……」
2人には秘密があった。
蝶瑚は親に自立の目的で一人暮らしをさせられている。これは自立心を育てるためではあるが、蝶瑚からの希望でもあった。学園はアルバイトなどは禁止のため、親が月に必要な額だけを渡し、それを遣り繰りして暮らす様な形をとった。また、何かあった時の為に実家の近くに借りることが条件だ。
その家によく、藤真は泊まりに行く。毎日顔を合わせ、蝶瑚の家に毎日行く。そして翌日が休みであったり連休だと蝶瑚の家に泊まる。それは蝶瑚の親も藤真の親も公認でのことだ。
この2人は恋仲で、特別なことでもない限りは毎日一緒に居る。学園内でも2人の関係は公言されていないものの、知れ渡っていた。ただ、藤真が蝶瑚の家に入り浸っていることも、2人の時の顔も知らない。それは2人だけの秘密であり、知らせてやる理由もないからだ。
「今日も黒い蝶と藤の花は綺麗だな……」
「ホント、絵になるよな……」
ざわざわとそんな声が聞こえてくるが、2人は気にも留めない。恐らく、耳にさえ届かないのだろう。2人とって外野は景色と変わらない。そんな景色の声など耳に入れる必要も無い。
「おはよう、蝶瑚、藤真」
後ろから声がかかる。
ダークトーンのマッシュストレートの赤髪。イエローサファイアを連想させるような美しい輝いた瞳。白雪姫かと思うような艶のある白い肌と小さく薄い薄紅色の唇。2人と並ぶと小柄に見えるが、その実174cmはあるすらっとした身長。
「奏、おはよ」
「おはよう、奏」
彼の名前は[[rb:朱沢奏 > あけさわかなで]]。2人の数少ない親しい友人だ。奏にとって蝶瑚と藤真は大事な友人で、2人の幸せは自分にも幸せ。故に、2人の邪魔をするような者は徹底的に排除するという苛烈さを持ち合わせた男だ。表面上ではにこにこと穏やかだが、反面裏では何を考えているか分からない。他の生徒達にその容姿と棘のある性格から「紅いバラ」と形容される。
「今日は1人なんだ」
「珍しいね、奏が1人だなんて」
「ああ、彼は寝坊してね。置いてきてしまったんだ」
奏の言う彼とは、蝶瑚と藤真のもう1人の親しい友人のことだ。
「それで怒ってるんだ」
「蝶瑚、僕は怒ってなどいないよ」
少しだけ感じた棘のようなオーラはそれかと、蝶瑚は口元を緩め、藤真も苦笑を漏らした。
「うーん、拗ねてそうだね」
「拗ねていても知らない。寝坊する方が悪いんだ」
「拗ねてねえよ」
藤真の言葉に奏がふんっと鼻を鳴らした時、後ろからぬっと黒い影が現れ、苦笑混じりの声が降ってきた。
「おはよう。寝坊の割に早いね」
蝶瑚がやれやれと振り返る。
ダークグリーンのショトートヘア。ブルーサファイアの様に深い青の瞳。小麦色よりもう少し暗めの褐色の肌と笑うと覗かせる真っ白な歯。そして184cmもある長身と程よくついた細めの筋肉。
「走ってきたんだよ。お陰で朝飯食ってねえもん」
はあ、と溜め息を吐いた彼は[[rb:大椛晴臣 > おおなぎはるおみ]]。
明け透けで隠し事などをせず、真っ直ぐで素直な性格。明るく裏表のない彼は生徒や教師からも好かれるような男。彼にとっても蝶瑚と藤真は大事な友人で、2人の邪魔をする者などが現れると普段の温厚さを忘れさせるほどに怒る。その髪色と輝かしく人を魅了する性格から「グリーンガーネット」と形容される。
「ほら、奏。晴臣が来たよ」
「良かったねえ、奏」
「何も良くないし、嬉しくもない」
「拗ねてんのはオレじゃなくて奏だなこりゃ」
この4人は中等部入学以来からの付き合いで、特に蝶瑚には数少ない友人だ。あまり人付き合いを好まず、普段の冷めた表情もあって友人と呼べる存在はほぼ居ない。そんな蝶瑚が唯一、友人として笑顔まで見せるのは奏と晴臣だけだ。
そして、蝶瑚も藤真もお互いに近付けても気にもならない相手でもある。奏は隠せていると思っているようだが、奏が晴臣のことを好いているのは明確で、晴臣は気付いていてわざと放置している。
「あまり意地にならない方がいいよ、奏」
「意地など張っていない」
「ふうん……じゃあオレ明日から1人で登校すっかなあ」
ふっと笑うと晴臣は3人から離れようとする。
「なっ……」
形容しがたい表情で固まる奏と、それを苦笑混じりに眺める蝶瑚と藤真。
こうして晴臣は奏を揺さぶって遊んでいる。だが、蝶瑚から見て晴臣が奏を好いているのもまた明確で、好きな子ほどいじめたいを体現しているのだろうと染々思う。
「いいのかなあ……晴臣って人気者だから1人で登校なんてしたら人が寄ってきそうだよね」
「学園に着く頃には囲まれてそうだね」
「蝶瑚も少しだけ晴臣くらい愛想良くなっていいよ?」
「無理」
追い討ちをかけるように蝶瑚と藤真がそんな掛け合いをする。周りの生徒達も晴臣に話し掛けようか悩んでいるらしく、そわそわしているのが見て取れた。
晴臣は人当たりも良く誰とでも気さくに話す。一度人集りが出来てしまえば下手をすると翌日まで近付けなくなるだろう。
「は、はるお、み……」
弱々しく晴臣の名を呼んで、ブレザーの裾をぎゅっと奏は掴んだ。ああ、まただと思いながら。
「ん」
にっと笑って晴臣は振り返り、奏の隣へと戻った。
誰が晴臣に裏表などないと言ったのだろうか。誰が晴臣はいつだって素直だと言い出したのだろうか。こんなにも奏には意地悪でどす黒い何かを抱えていると言うのに。
そんなことを思いながら蝶瑚は2人のやり取りを見ていた。
晴臣が唯一腹黒さなどを見せる相手だろう。こうして毒で麻痺させるかの様に自分に依存させて、離さないつもりなのだ。
「奏、嬉しそうだね」
「晴臣のことが好きだからね、奏は」
藤真の嬉しそうな声に蝶瑚はそう返した。きっと、藤真は晴臣のこの黒く歪んで重ったらしい感情には気付いていないのだろう。そして奏もまた。
いつか、奏が晴臣に組み敷かれる日、晴臣は何を思うのだろうか。そして、奏はそんな晴臣の重く歪んだ愛情を見て、どうなるのだろう。
あの日、自分が藤真に抱いた感情を晴臣は持つのだろうか。奏は藤真の様にそれを受け入れ、藤真の様に堕ちるのか。
「……まあ、その時になれば分かることか」
「蝶瑚?」
ぽつりと漏らした蝶瑚の声に、藤真が不思議そうに蝶瑚を見上げていた。
「ああ、2人の話だよ。俺が初めて藤真を抱いた時みたいに、晴臣が奏を抱いたらどうなるのかなって」
「うーん……分からないけど……多分」
そこで言葉を切って、前方を歩く2人の姿を見た。少しだけ泣きそうな奏の頭を撫でて嬉しそうに、愛おしそうに見つめる晴臣の顔。そして、泣きそうで、でも少し照れた奏のその仄かに色の香る表情。晴臣にしか見せることのないその表情。
「奏は晴臣にどんな抱かれ方をしてもそれを受け入れると思う」
淀みなく藤真は断言した。
藤真は奏がどれだけ晴臣のことを好いているのかを知っているし、きっと自分と同じ側の人間なのだろうと感じていた。既に甘い毒にやられ、囚われた感情はきっと。それが自分に向けられた愛なのであればどれだけの痛みや歪みであっても、受け入れてしまうのだろうと。
そして気付いた時には自分でさえも歪みきってしまって、離れられなくなる。
「俺もそう思う。晴臣に壊されても、きっと奏は幸せだと感じるんだろうね」
「晴臣が奏を壊すとは思えないけどね。蝶瑚じゃないんだから」
「へえ……?」
しまった、と。藤真は恐る恐る蝶瑚へ視線を戻した。妖艶で熱を帯びた、真っ黒な瞳。その瞳が藤真を見ている。
「藤真は壊されていいんだ?」
「そんなことは……っ」
「奏、晴臣。俺達少し抜けるね」
蝶瑚の声に、奏と晴臣は振り返った。蝶瑚と奏の顔を見れば大体察しはつく。
「分かった。始業には遅れないように気を付けるんだよ」
「程ほどにな」
理解のある友人で良かったと蝶瑚は思う。
理解がありすぎるのも問題だと藤真は思う。
玄関で靴を上履きへと履き替え、藤真の手を引いて蝶瑚は人気のない所へと向かう。選んだ先は殆んど人が使用しない特別棟のトイレ。
ここは家庭科の実習や理科実験、パソコンルームなど教室では行えない授業等の際に使用される棟だ。現在の授業表を見る限りでは、1限目でここを使うことはまずない。トイレも皆、この時間ならば玄関近くのトイレか教室近くのトイレを使うはずだ。
藤真をトイレの個室へと押しやって、後ろ手に扉と鍵を閉めた。
「蝶瑚……ねえ……待って……」
流石に1限目前はまずい。学校で何度か抱かれたことはあるが、それは昼休みであったり放課後の話で、こんな朝からは初めてだ。
「黙れよ」
「っ……」
低く吐息の混ざる艶やかな声が耳にかかる。それだけで藤真の身体は動かなくなり、ぞわぞわとしたものが身体を駆け巡る。
「……いい子」
「んっ……! 」
軽く藤真の耳を噛み、舐めあげる。耳元でぴちゃぴちゃと水音が響き、耳を這う舌の感触にふるふると身体が震えた。それは恐怖などではなく、与えられる快楽への震え。
「耳舐められただけで何でそんなに息荒くしてんの?」
「だって……」
「藤真は変態さんだねえ」
「蝶瑚にだけだもん……」
「ごめん、そんな可愛いこと言われたら手加減出来ない」
最初から手加減などする気はなかったくせに、と。藤真はそう思いながら、蝶瑚の深い口付けを受け入れた。蝶瑚の舌が、自分の唇を割って口内へと侵入し、深く執拗に犯す。歯列をなぞり、角度を変えて深く深く。
「ん……ふぅ……っ」
キスだけで頭が蕩けてしまいそうな程。藤真の頭はぼぉっとして、そしてもっと、と求めてしまう。
蝶瑚の手が器用に藤真のズボンのベルトを緩めた。ファスナーを下ろし、下着越しに藤真の既に固さを帯びたソレを指でスーッと撫でる。
「んんぅ……っ」
ゾクゾクとした甘い痺れが駆け抜ける。今、自分のモノに触れているのが蝶瑚の指だと言うだけでも達してしまえそうなほど、熱く感じる快楽。
「時間ないからあんまり可愛がってあげられないな……口だけでイカせてあげる」
「早く挿れて……?蝶瑚の欲しい……」
「いいの?これから授業なんだよ?」
「くれないと授業集中出来ない……」
甘い声で涙目のまま訴える藤真。その姿に少しだけ口角を上げ、ゾクゾクとした感情に蝶瑚は支配される。
「後悔しないでね」
藤真を後ろ向きにさせ、手を壁につかせて、尻を自分の方へ向けさせた。指を孔に沿わせ撫で上げ、そのままずぷずぷと音を立てて埋め込んでいく。
「あっ……んっ……やぁ……早く…ぅっ」
「ちゃんと慣らさないと痛いよ?それとも痛い方がいいの?」
「痛くても良いから……ぁ……っ」
仕方ないなと笑い、そのまま自身と藤真のズボンと下着を下ろす。
ビリッと袋の破れる音。その音だけで藤真は感じてしまう。直後、己の秘孔にあてがわれる熱く固いモノ。
「藤真、力抜いて」
「う、ん……っ」
ゆっくりと埋められていくモノ。求めていたモノが体内へと押し込まれていく感覚に身体がふるふると悶え、甘い吐息が小さく薄い桜色の唇から零れる。
「簡単に咥えるようになったね、藤真のココ。全然解してないのに」
「毎日だもん……」
「そうだね。毎日俺に抱かれて喘いでるもんね」
「うぁぁあっ!」
ぱんと最奥を勢いよく一突きされ、藤真は目を見開いて嬌声を上げた。
「声出したらダーメ」
「んぐぅ……っ」
蝶瑚は藤真の口を押さえながら腰を打ち付けた。その度、喘ぎ声の代わりに荒い息が漏れる。
「ふっ……うぅ……ぁっ……」
卑猥な水音と2人の荒い吐息が狭いトイレの個室を支配する。
「そろそろイカないと授業遅れちゃうね……」
「んんんん……っ!!」
蝶瑚は先程よりも腰を激しく打ち付ける。急に襲う激しさと快楽に藤真は抑えきれない声を漏らしてしまう。何度、蝶瑚に抱かれてもこの快楽に慣れる事はなく、喘ぎ声が漏れ出す。ただ蝶瑚の手によって喘がされる。
「藤真、イッていいよ」
「ふぁ……ふぅ……うぅ……んぅ……っ!」
するりと蝶瑚の手が前に伸び、膨張して限界を迎えている藤真の敏感になった秘部を擦り上げた。快楽に身を捩り、蝶瑚のモノを咥え込む孔はキュウキュウと締め付ける。
「ひっ……ぐぅ……っ……ん……ふぁ……っ……!んんんんん……っ!」
「あ……俺もイク……っ」
藤真が白濁とした欲望を蝶瑚の手の平にぶちまけた後、追うように蝶瑚も藤真の中で果てた。
ズルりと引きずり出すと、藤真の秘孔は名残惜しそうにヒクヒクと痙攣していた。
藤真がぐるりと蝶瑚へ向き直ると、蝶瑚は手に付いた藤真の吐き出した白濁をペロリと舐めて見せる。
「や……っ……恥ずかし……」
頬を紅く染め上げ肩で息をしながら、目を逸らす藤真を蝶瑚は愛おしそうに眺めている。
「何で?美味しいよ藤真のコレ」
「は、早く洗って……っ……」
「勿体ないけど仕方ないか」
個室から出て水道で念入りに手を洗い、教室へと足を向ける。
藤真は足腰がまだ震えていて、上手く歩けずにいた。
「どうする?保健室行く?」
「やだ、教室行く。僕が居ない間に話し掛けられてたら嫌だ」
「可愛いね、藤真」
頭にキスをして蝶瑚はふっと笑った。
その姿を黒い影がじっと見詰めていることに蝶瑚だけが気付いていて、藤真は気付かずに蝶瑚に寄り添って教室へと向かった。
これから起こる波乱など気付きもせずに。
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