アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
each [common]
-
ここは獣人と人間が共存する国。
アニュアルロスタツム王国。
通称アニュロス国。
この国には様々な種族が暮らしている。
種族だけではなく、恋愛体制も自由だ。
異性でのカップルも居れば、同性のカップルも居る。
種族も性別も超えての付き合いが持たれている国である。
「ユキノー!」
ドン、と言う音を立て、コーヒーブラウンのミディアム髪をちょんと1つに結い、灰茶の目をした可愛らしい青年は、水色がかったミディアムの銀髪にスカイブルーの色の目をした、雪のように色白の青年に飛び付いた。
コーヒーブラウンの髪の青年には犬の耳と尻尾が生えていた。
彼は犬獣人シャント族である、モルガだ。
飛び付かれたユキノという銀髪の彼は人間ユマンシュ族。
「痛い。どうしたの」
「えへへーやっと会えたー!」
モルガはスリスリとユキノに頬擦りする。
たった数時間離れていただけでも、モルガには途方もなく長い時間に感じてしまう。
「おやおや。相変わらず仲良しだねえ」
「モルガ、ユキノは人間なんだから手加減しなよ」
モルガとユキノは声のした方を振り返る。
白みがかった長い金髪にジョンブリアン色の目をした青年と、漆黒のミディアム髪に金色の目をした青年が立っていた。
金髪の青年には狐の耳と尻尾。彼は狐獣人ルナークス族のミラク。
猫の耳と尻尾が生えた漆黒髪の青年は猫獣人シャツツェ族のタリスだ。
「ミラクとタリスも相変わらずだね」
「あはは。お陰様でねえ」
ユキノの言葉にミラクは笑いながら言葉を返した。
こう見えてこの2人は気が合うのか、親交がある。
「ふんっ。別に仲良しじゃないし!」
「あータリスまたそんなこと言ってるー!ミラクにまたお仕置きされちゃうんだー!」
「うるさい!馬鹿モルガ!」
ここはここで仲が良い。
タリスは少し素直ではない所があるが、モルガの持ち前の素直さと明るさで関係が拗れることもなく済んでいた。
「おーやってるやってる」
「みなさん、こんにちはー。お揃いですね」
声を掛けてきたのは深紅のミディアムウルフ髪にルビー色の目をした青年と、乳白色の内巻きになったミディアム髪にガーネットのように赤い目の青年だった。
赤髪には狼の耳と尻尾が、乳白色の髪の青年には兎の耳と尻尾がそれぞれ生えていた。
狼の方は狼獣人ルーヴォ族で、ベリル。
兎の方が兎獣人のラパーゼ族のモスールだ。
「ベリルとモスールまで。珍しいね皆が揃うなんて」
「と言うことは、彼等が揃ったら皆が揃うねえ」
「ハッ。そんな奇遇があるかよ。示し合わせた訳じゃねえのに」
ユキノがやや驚いたように眉を上に動かした。
面白そうにミラクが言うと、ベリルが鼻で笑いながら言った。
「モルガ、タリス。こんにちは。相変わらずですか?」
「うん!俺は元気だよー!」
「ボクも相変わらず元気。モスールは?」
「僕も変わらずです」
3人は和やかにお互いの近況報告を始めていた。
「何も約束してないのに皆が揃ったら面白いんだけど」
「アイツ等まで揃ったらそりゃあ奇跡だな」
「おう。アイツ等ってのは誰のことだ?」
え?という顔で、ユキノとベリルがそちらを向いた。
ミラクもおやおやという顔で、少し驚いた様子だった。
「珍しいじゃねえか。全員揃ってるなんて」
そう言った男性は熊獣人のウルーア族で、名はアイアン。
コーヒーブラウンのショートヘアにココナッツブラウンのタレ目が特徴的な、高身長で少し筋肉質、いわゆる細マッチョの青年だ。
見た目にあまり似つかわしくない熊の耳と尻尾が生えている。
隣に居るのはバンサー。
胡桃色のミディアム髪に緩めのパーマをかけ、少し眠たげな琥珀色の目と、狸の耳と尻尾が特徴的な男性。
狸獣人のプレックス族だ。
「あれ~?みんな集まってたの~?」
ふにゃあと笑い、モルガ達の輪に駆け寄っていく。
「おいバンサー、転……」
アイアンが転ぶなよと言うよりも前に、バンサーはド派手に転んだ。
転んだ先にはモルガ達が居たお陰で、彼等がクッションとなり怪我はしないで済んだようだった。
「う~ごめんね~……また転んじゃった~」
「バンサー相変わらずなんだね!」
「ボクまで巻き込まないでよ……」
「皆さんお怪我ないです?」
転んだにも関わらずの和やかさだ。
「……相変わらずだね、バンサー」
「ドジっ子なんて言葉は彼のためにあるんだねえ」
「なあ、アイアン。バンサーは本当にあれで大丈夫なのかよ」
「ああ、バンサーはあれが通常運転なんだよ」
この8人は昔馴染みの知り合いで仲が良い。
よく皆で集まっては食事会やお泊まり会なども開いたり、個々で集まったりなどして親交が深いメンバーだ。
特に、ユキノ、ミラク、ベリル、アイアンの4人と、モルガ、タリス、モスール、バンサーの4人がそれぞれで仲が良い。
時折、4人同士で集まったり、それぞれのペアで集まっていることも多い。
この8人はそれぞれ恋人同士だ。
ユキノとモルガ、ミラクとタリス、ベリルとモスール、アイアンとバンサー。
全員、種族は違うがとても仲睦まじい。
「約束もなしに揃うの珍しいね」
ユキノがポツリと言った。
「そうだねえ。皆、この後は何か予定でも?」
「いや、ねえな。買い物終わらせてきたところだし」
「オレも仕事終わって帰ってきたとこだからねえよ」
ミラクの問いにベリルとアイアンが答えた。
「じゃあ、久し振りに皆で食事でもするかい?」
「いいね。どこにする?」
「ユキノん家か俺んちだろ大体。この人数だと店は入りづれえし」
「片付いてて広いのがユキノとベリルの家なんだから仕方ねえだろ!」
「ワタシの家も片付いているのだけどねえ?」
「ミラクの家は妖しさあるからやだ」
「……ユキノ、ワタシにだけ当たりが強くないかい?」
そんなやり取りを交わしながら、4人は各々の恋人へと目を向けた。
恋人達は恋人達できゃっきゃっと盛り上がっているようだ。
「モルガ。皆でこの後食事しようって話なんだけど」
「え!するする!どこでやるの?」
「モルガはどこがいい?俺かベリルの家が候補になってるけど」
「うーん……ノスタヴェー酒場がいい!」
ノスタヴェー酒場。
各地の郷土料理や地酒などを扱う店だ。
各獣人族にも里や村などがあり、その各地での郷土料理や名産品、地酒など多数が存在する。
ノスタヴェー酒場の店主である虎人のティーガー族、アタングが様々な種族の集まるこの国で、皆が故郷の味を楽しめるようにと開いた店だ。
「いいじゃんノスタヴェー酒場。ね、ミラク」
「そうだねえ。アタングさんに聞いてみるよ」
ミラクはそう言って、近くの電話ボックスへと向かった。
タリスもそれについて行く。
「ベリル、ノスタヴェー酒場ですよ。行けますかね?」
「まあ、あそこの店は広いしな。宴会なんかもちょくちょくやってるし混んでなけりゃ行けんだろ」
「バンサー?おい、こんなとこで寝んなって!ノスタヴェー酒場だとよ」
「んぅ……?ノスタヴェー酒場~?楽しみ~」
各々が思い思いの会話を始めた。
ミラクはまだ話しているようで、それには気にも留めていない。
全員、ダメなら他の場所という考えが基本にあるからだ。
「確認が取れたよ。今日はまだ空いていて席があるからおいでと言っていた」
「そう。じゃあ何か持っていこうか」
「アタングさんなら食材か酒の方が喜ぶんじゃねえの」
「んじゃあ何か適当な食材と酒でも買ってこうぜ」
ミラク達の会話を聞いて、タリス達はまたきゃっきゃっとはしゃぎ始めた。
「ほら。皆行くよ」
ユキノの声で皆がぞろぞろと歩き出した。
「ねえねえユキノ!今日は何食べる?」
「モルガの食べたい物を食べていいよ」
「じゃあユマンシュの名物がいいなー」
ユキノの腕に己の腕を絡め、モルガは問い掛けた。
その問いへの返答にモルガは嬉しそうに目を細めて、また応える。
「今日はタリスの好きな魚があるといいね」
「たまに入荷してないから市場で探していこ」
「手土産に持っていけば確実だ」
こちらではミラクとタリスが相談をしていた。
タリスを見つめるミラクの目は愛しさで溢れている。
「ねえ、ベリル。何を食べましょうか?」
「モスールの国の郷土料理食いたいな」
「じゃあじゃあ、お互いの郷土料理頼みましょう!」
ニコニコと絶えずに話しかけるモスール。
ベリルはそれに笑顔で応え、モスールのニコニコとしたその笑顔を見つめている。
「アイアンたーくさん食べるんだよ~」
「お前もたくさん食っとけよ」
「あれ食べる~この国名物のコーンと雄鶏のクリームパイ~」
にへらと笑い、バンサーはアイアンと自分の手を絡めた。
小さくて柔らかいその手を、アイアンは優しく握りしめ、そうだなと返す。
それぞれの恋人と花を咲かせ、時に他の者と言葉を交わし。
そうして笑顔と言葉を飛び交わせながら、4組の恋人たちは雑踏へと消えていった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 1