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それがりんねだった
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確か、小学五年生の時、だったっけな。
ああ、思い出した。その時は、ちょうど書写の授業中だった。
担当の先生が怖かったから、いっつもうるさいみんなも、ちゃんと話聞いてたの。
そんなピリピリした空気の中で、すうー、すうー、って、寝息が聞こえてきた。
びっくりして、そっと後ろ向いたら、思いっきり居眠りしてる子がいた。
クラスでも友達が多くて、運動も勉強もできる子。
喋ったことはないけど、なんとなく知ってる子。
喋ってみたいけど、なんとなく手が届かないような子。
それがりんねだった。
いつも授業中は懸命にノートをとっているし、それまでりんねの寝顔を見ることはなかったな。
先生の話そっちのけで、綺麗な寝顔に見とれていたら。
かくん、ってなって、目が覚めちゃったんだろうな。
一瞬動きが止まって、ぴく、って腕が動いた。
そしてすごく焦った顔したりんねが前を向いた時。
ばっちり僕と目が合った。
内心、すごく怖かった。
ずっと見てたの嫌に思われちゃったかも、なんて思ったりして。
りんねも、びっくりした顔してたけど。
へへ、って笑ってくれた。
ぱっちりしたつり目を細めて、僕に向けたような笑顔。
それは僕が思っていたより、お茶目で、優しい笑顔だった。
だから、僕も笑ったんだ。
高校生になった今でも、りんねはへへ、って笑う。
こうやって近くで見ると、なんだかすごく安心する。
だから、僕も笑う。
りんねが笑うから、僕も笑うんだ。
雨降る街頭で作られたふたりの空間は、確かにそこにあった。
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