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白神高校の生徒たち2
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日本の高等学校の日常なんていうものは、あまりにも退屈なものである。
しかし、その日常の所々に潜むスパイスを甘く見てはならない。
そのうちの一番有名なものは、何か。
四時間目のチャイムが、日の差す校舎内に響き渡った。
「お、もう終わりか。じゃーここまでの範囲の確認テストやるから各自勉強しとけー」
「ぅううううううごおおおおおおおらああああああああああ今日こそ幻のカスタード揚げパンは俺のものダアアアアァァァ!!!!!!!!!!」
男性教員の言葉を最後まで聞かずして、数人の生徒が立ち上がり、我先にとドアへ駆け込む。
そう。
昼休みのパン争奪戦である。
先陣を切ったのは主に運動部や、いわゆる陽キャと呼ばれる生徒がほとんどで、その中にはりんねと悠葉の姿もあった。
「微睡みのチャラ男こと、星宮りんねよ……我らは“幼馴染”の契りを交わしてきた仲ではある……しかし……今は、貴様とは敵として関わろうと所存……!」
「……」
「おい‼︎ ちょっと無視すんな‼︎ 辛いから‼︎」
「揚げパン揚げパン揚げパン揚げパン揚げパン」
「あ、りんね壊れたわ」
運動量の多い運動部に所属するたちは、必然的に消費カロリーも多くなる。
そして異様に腹が減り、異様に美味しいパンを口にしたくなるものだ。
そんな彼らにとって、購買部の人気のパンを逃すことは、かなりのダメージとなるだろう。
「お前らーーーー!!!!!!! ちゃんと礼してから出てけーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
男性教員の悲痛な叫びは、彼らの耳に届くことはなかった。
購買部は、既に沢山の生徒で溢れかえっていた。
それもそのはず。
今日は、月に一度しか売られない、幻のカスタード揚げパンが店頭に並ぶ日なのだ。
そこまで数が少ない訳でもないのだが、頻度の少なさ故に毎回即完売してしまう。
新入生のりんねら一年生は、前回の揚げパンを逃している者がほとんどだ。
今度こそ、と気合いが入っているように感じる。
「やべー、出遅れたか」
「ん。……悠葉、あれ樹李じゃね?」
「ホントだ。おーい、樹李! ちょー手伝えや!」
二人の視線の先に、背が高く身の締まった男子生徒が佇んでいた。
彼らと同じく一年生の、黒村樹李である。
「お、ミヤホシとサワスギじゃん」
「ん。揚げパン買えたー?」
「もち! ほら」
樹李の手には、二つの揚げパンが収まっている。
生地の表面の艶が、二人の空腹をくすぐる。
「よかったな。俺らまだだからさ、取ってくんの手伝ってー」
「無ぅーー理ぃーー」
「は?」
悠葉の睨みもそっちのけで、樹李は目をうっとりとさせる。
「いやあ、ね? せっかく買えたワケですし? 早く届けてあげたいのだよ!俺の」
ふ、とりんねの左耳に耳打ちをする。
甘い吐息を、目一杯に混ぜて。
「カ・ノ・ジョ・に」
樹李の声を受け取った次の刹那、りんねの身体がピクリと動いた。
「うッ……//」
「……? まさか、お前耳弱い?」
「失せろクソリア充ーーーー!!!」
苦笑しながら樹李を睨みつけるりんねの横で、悠葉はパン争奪戦に勤しんでいた。
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