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頭を撫でてもらうの、特別に好きってわけじゃない。他の人にされたら、きっと気味悪さのあまりぶん殴りたくなる。リンだけが違う。何が違うのかは、よく分からない。実際、他の人にはされたことないし。いや、あるか。任務で女の人と寝たときとか。でも仕事中なんて、俺であって俺でないようなもんだから、素の自分と比べようとしたって無理だ。
頭を撫でてもらうと、まるで自分が動物になったように感じる。されたいから、おとなしくしてる。普段は優位な視覚を、目を閉じて休ませる。汗の匂い。雄の匂い。熱い身体の、汗ばんで少し冷えたリンの肩。お互いの胸元がそれぞれの呼吸のリズムで上下する。脈打ってるのすら分かる。首筋にキスされて、俺は自分にも首があったことを思い出す。無防備に喉元晒してる俺は、こいつに隙を与え続けているのを知る。なんの抵抗も出来なくて殺される距離。でもそれはリンだって同じことで、なんなら俺に組み敷かれて弛緩してるリンのが隙だらけだ。
目が合うと、こいつは微笑った。
ああ、これは無敵だ。到底俺には勝ち目がない。今殺せと命令されても、俺は簡単に背く自信がある。殺せない。殺せないには二種類あることを俺は知る。自分が全力で立ち向かっても倒せない状況の他に、一切の気力を削ぐ相手には、こちら側こそが微塵も手出し出来ないと知る。だっておとなしくしてたら、キスとかくれるし。やっぱり頭は撫でてくれるし。
俺は神とか宗教とかを信じてないし、なんなら嫌いだけど、許される感覚が、自分を慰めるのに非常に便利だと知る。他のものには替えられない。そりゃ皆こぞって神様を信仰するわけだ。許されるとか救われるとか、随分中身のない言葉だと思って馬鹿にしてたけど、痛みを取り出して代わりにあたたかいもので心を満たされると、俺だって何かを信じてみたくなる。軽薄だった他人の言葉が、重みを増して、自分の言葉になる。別にいいよ。信じてやっても。俺が思ってるよりもリンは、俺のことを考えてくれているだとか。
もしかしたら俺のことを、分かってくれるかもだとか。
「…………っ、」
軽いキスを何度かしていたら、リンの中がうごめいて俺を誘う。ゆっくりと奥をつついてみると、リンが俺にしがみついてきた。抱いているのに、傷つけたくない。矛盾した思いに苦しくなって、口づけを乞う。熱っぽい吐息に混じってリンが微かに呻く。掠れたその声を、もっと聞いていたい。
「っ、あ、………………待って、ぁ……、…………っ!」
俺を押し返す手とは裏腹に、ぎゅっと狭くなって奥に誘う。そろそろまたイくかな。気持ちよくさせたいだけだから、逃げないでほしい。だいたい、待ってって言われても、先に挑発してきてるのは、そっちだし。分かってんのかな、こいつ。いまさら腰の止め方なんて分からない。全然無理。
「っ………! ぁ、あぁ……っ、ん、ぁ、待って、ちょっと、本当に、」
焦ってんの可愛い。苦しいだろうけど頑張ってね。開発されてない身体は厄介で、本人の気持ちを置いてけぼりにしてく。ごめん。許してほしい。俺の頭がおかしくなる前に、ちゃんと伝わってほしいのだけど、言葉は見つからないままで夜は深く濃くなっていく。肺が苦しい。荒い呼吸がうわずって、ひきつる。目の前は真っ暗になって、頭のなかがざわつく。うるさい。ああ、嫌だ。なんでおれはこんなことをしてるんだっけ。怖くなって、頭の奥にある真っ黒な冷静に触れる。それが残酷だと、気付いたときにはもう遅い。
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