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前編4
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新出の寝室は広い空間にキングサイズのベッドとチェストがあるだけの、とてもシンプルなものだ。
モノトーンでコーディネートされているので一見オシャレに見えなくもないが、ヤリ部屋にしか見えない。
そもそも寝室に限らず、新出の家には生活感がない。
物が極端に少なく、最低限の家具と洋服くらいしか置いていないのだ。
ファンレターは受け取らないし、トロフィーや使い終わった台本なども事務所に置いていってしまう。
「おい、さっさと脱げよ」
「ぐ……」
新出は着ていたシャツを脱ぎ捨てると、乱暴にそう言った。
バランス良く筋肉のついた男らしい身体を前にして、二十四歳一般男性のたるんだ裸を見せることに躊躇してしまう。
新出の身体は見せるための商品として、パーソナルメニューを組まれ計画的に作られたものだ。
忙しい撮影の最中でも欠かさずこなしているというのだから驚く。
「あの、念のために確認なんですけど……俺が挿れられる方ですか?」
「お前自分のところの商品にちんこ突っ込む度胸あんの?」
「すみません、何でもないです」
悪あがきをやめて服を脱いでいく。
ベッドの端に腰かけてチノパンを脱いでいると、新出の視線を感じて振り返った。
不機嫌そうな顔に「遅い」と書いてあるのがわかる。
「あの、シャワ―とかは……」
「色気ねぇな。これ以上待たせる気か?」
「すみません、何でも……わっ!?」
腕を引っ張られ、ベッドの上に仰向けに投げ出される。体勢を整える暇も与えられず、脱ぎ掛けのチノパンと下着をはぎ取られてしまう。
新出は覆いかぶさるように俺の横に手をつく。
いつもは怒られてばかりで顔を直視することもないので、改めてその整った顔立ちに感心する。
暗い室内でも、すっと伸びた鼻とシャープな輪郭が美しい陰影を作り出している。俺とたった数ミリずつの違いしかないように見えるのに、散り積もるとここまで差がでるのだから神様は残酷だ。
まじまじと見つめていると、新出の眉間のシワがより深くなる。
「……お前みたいなタイプ、一番嫌いなんだよ」
「んっ」
忌々しそうに吐き捨てると、威嚇でもするかのように唇に噛みついてきた。
ピリ、と下唇に痛みが走る。乾燥したまま放置していたカサカサの皮膚が破けたのだろう。
対して新出の唇はしっとりとしていて柔らかい。俺の皮膚で傷つけてしまわないか不安になった。
唇を割って口内に舌が侵入してくる。
上あごをなぞられた瞬間、ぞわりと経験したことのない快感が走り、思わず新出の身体を押し返す。しかし鍛えた身体はビクともせず、すぐ両手を取られ頭の上でまとめられてしまう。
「(この人、めちゃくちゃキス上手い……!)」
成すすべもなく口内を引っ掻き回され、翻弄される。
自分にこんな性感帯があるとは知らなかった。
弱い部分をなぞられるたびに身を捩りたくなるほど下半身が熱くなる。手だけではなく上半身にも体重をかけられ動けなくされてしまう。
そうなるともう唯一動かせる足で踏ん張るしかない。
無意識のうちに膝の内側を新出の身体にすりつけてしまい、ハッとして目を開く。黒い瞳がいじわるそうに細められた。
「甘えるのは上手いんだな」
「ちが……あっ」
新出のキスのせいでゆるく勃起したちんこを数回扱かれた。快感を得た身体をより高めるには十分すぎる刺激。新出の手の中で、ちんこがムクムクと大きくなる。
「どこが違うって?」
勝ち誇ったような言い方に悔しくなる。
身体の自由を奪われ、俺は完全に劣勢だ。
抱かれる方というのはこんなにも弱い立場なのか。
新出の手が尻に回る。
指の腹で穴をグッと押されて、思わず身を固くした。
「あんた男に抱かれたことあるの?」
「な、ない、です」
「ふぅん。安鷹さんに言われたら、男に抱かれんだ」
また嘲笑される。
ムカつく!
今までグッと堪えてきたけれど、恥ずかしさに耐えるのに精いっぱいで、つい言い返してしまう。
「新出さんこそ、セックス中はおしゃべりですね。いつもは不愛想なのに」
「…………」
新出の眉がピクリと動く。
小ばかにした笑みが消え、鋭い瞳で睨まれた。
まずい、言いすぎた。
新出は俺の手を解放すると、無言のままチェストからローションを取り出す。
「すみません、今のなし……」
「黙ってろ」
雑な手つきでローションを局部に垂らされる。あまりの冷たさに足を閉じようとするも、足首を掴まれ大きく開かれてしまう。
「そんなにお望みなら、喋る暇がねぇくらい喘がせてやるよ」
「ま、まって……ひっ」
新出の指が尻の中に入ってくる。
ローションのおかげなのか、はじめてなのにグプグプと音を立てながら難なく受け入れてしまう。
「や、ぁ……んうっ♡」
新出の柔らかい唇が乳首を食む。尻をほぐしていない方の手はやわやわとちんこを刺激している。
俺の言葉で、スイッチが切り替わったのが分かった。
相手の身体を快楽へと導くための愛撫。
だけどそれは愛情からくる行為ではない。
快楽で屈服させるための手段だ。
新出は的確に俺の弱いところを見つけていく。
自分ですら知らないものを暴かれていくことに少しだけ恐怖を覚える。しかし与えられる快楽に、抗う力すら奪われてしまう。
「んっ♡ぅ、ん♡あッ♡は、ぁん……ッ♡」
新出の舌先が乳首を転がすと腰に甘く切ない感覚が走る。
先走りでぐしょぐしょになっているちんこは絶頂に至らないように緩急をつけて扱かれ続け、次の強い快楽を求めている。
そこまできている射精への絶頂にたどり着けない苦しさ。
尻をいじられる違和感はすでにどこかへ飛んでしまっていた。
「あっ♡は、ぁ……ん♡んあ♡あ、んん♡や、もう……♡あっ!?」
尻の中のある部分を弄られた途端、バネでもついてるみたいに身体が跳ねた。
寸止めされていたちんこから、ぴゅくっと精液が溢れる。しかし射精する時の感覚とは違う。まるで無理矢理押し出されたみたいだ。
なんだ、これ。
「あらいでさ、あっ♡あ♡まって…、そこ♡んッ♡あァッ♡」
新出は俺の反応には微塵も興味がなさそうに、前戯を続ける。
尻に二本目の指が入り、より強く中を擦られる。
最初は何が何だかわからなかったそこへの刺激は快楽へとすり替わる。いつの間にか新出の手はちんこから離れてもう片方の乳首へ。
胸と尻だけで強烈な刺激が与えられていく。
「んう♡あッ♡あ、ぁん♡やっ♡んん、う♡はぁっ…♡」
これまでの性経験とは全く違う世界。
意図的に未開発の部分ばかりを攻められ、気がおかしくなりそうだった。
自分の身体が、自分の身体ではなくなっていく。
どれくらい愛撫されていただろう。
快楽から逃げようと自分の手を噛んでいたら、新出の親指が口を開かせるように割り込んでくる。
頭の中がぐらぐら煮えるような熱さで犯され、意識に膜が張っているみたいなところから引き戻された。
新出は何も言わず俺の腕を自分の首に回すよう持っていく。
気づくと尻から指が引き抜かれていて、かわりに指よりも太く硬いものが押し付けられる。
あぁ、もう入るのか。
早いなと思ったけれど、俺の腹はいつ出したのかもわからない精液でぐちゃぐちゃだった。
霞む視界の中で、やっと焦点が合って、新出の顔を見る。
表情こそ普段と変わらないものの、呼吸の荒さが新出の興奮を物語っている。
新出もその気になっているのか。
グッ、と尻の穴を押しつぶすような圧迫感があったのち、新出のちんこが俺の中に入ってくる。
「あっ……、く、ん、ぅ……っ♡」
ローションがぐちゅぐちゅ音をたてる。
奥へ挿入するに従って互いの身体も近づいていく。
新出の腰が止まった時には、鼻先がくっつきそうなほど密着していた。
至近距離で見る黒い瞳は、思っていたよりも欲の色で濡れていて、年相応の幼さを感じた。
新出はわずかに顔の角度をかえ、唇を寄せる。
しかし寸前のところで何かを躊躇うように顔を離した。
距離感を考えあぐねているようだ。
ここまでして距離感も何もないだろうと思うけれど、近づいたからこそ自分と他人の境界が鮮明になるということはよくある。
たった数ミリの差が、取り返しの利かない引き金になってしまう。
彼はそれが怖いのだろう。
他人を翻弄し、俯瞰で眺める位置にいてこその余裕なのだ。
自分の正体がわからなくなるところに踏み込めない。
遊びに慣れた大人のようで、熱のあがりきれない心を持て余している。
それではどんなに身体を重ねても、寂しいままだ。
「いいよ」
深く考えず口に出していた。
新出の目がわずかに開かれる。
首に回した腕を引き寄せて、新出に口づけした。
不思議な気分だ。
優越感とは違う。同情とも違う。
ただ目の前の年下の男を受け入れてやろうという気持ちになった。
道に迷った人に案内するように、新出のいる場所から手を引いて好きなところへ連れて行ってやろうと。
唇を重ねてから、そういえば自分の唇が荒れていたことを思い出す。
すぐに顔を離したが、追うようにして新出の唇がまた吸い付いてくる。
「んっ、ふぅ……ん、う♡」
下唇を丁寧に舐められ、乾いた皮膚が潤っていく。
キスとともに腰が動き出した。中をゴリゴリ擦られ、少しずつ快感の兆しがあらわれる。
「は、ん、んむ♡じゅる……んぅ♡ふぁ、ん♡んう♡」
ぐちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ、くちゅ、ぬちゅ
ちんこが出し入れされるたびに卑猥な音が響く。
舌を絡めあう口元でもぴちゃぴちゃと水音が鳴っていて、ゆるく互いの身体を擦り合わせるリズムが心地いい。
しばらく愛撫の延長の様なセックスに酔いしれていたが、呼吸がつらくなってきて自然と顔が離れる。
息が熱い。
どちらの息なのかわからないくらい、溶け合っている。
動きをとめて、熱にうかされた瞳で互いに見つめ合う。
心なしか、新出の表情から険がなくなった気がする。
長いまつ毛の隙間から見える瞳がきらきら輝いて見えた。
ああ、なるほど。
彼に熱狂する人たちの気持ちがわかる。
この瞳に捕らわれたら、他のものなんて霞んでしまうだろう。
「好きにして、いいですよ」
美しい黒い瞳がちらちら揺れる。
煽ったつもりはなかったのだが、俺の一言で酔いから覚めたようで、また眉間にシワが寄る。
「偉そうに……」
「あっ!?」
ばつんっ、と激しく腰を叩きつけられる。
眠っていた獅子を叩き起こしてしまったらしい。
新出は俺の膝の裏に手を差し込んで足を持ち上げると、ぎらついた瞳で見下ろしてきた。
「やめろって言ってもやめねぇからな」
そう言い捨て、抽挿を再開する。
先ほどまでの緩やかな動きとは違い、激しく中を犯すように腰をぶつけてきた。
ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ、ばちゅ
「あっ♡あっ♡ん♡あ、ぁん♡あ♡んぁッ♡あらぃでさ、ん♡…いたっ」
思いっきり肩を噛まれた。
甘噛みとは言えない強さだ。
慌てて新出の顔を見ると、猛獣のような瞳で睨まれた。
試し行動。
なぜかその言葉を思い出した。
めちゃくちゃ痛い。
セックスでこんな手荒なことをするなんてどうかと思う。
これがサディスティックな趣向による行動だったら、逃げ出していただろう。
だけどたぶん、そうではない。ここで逃げてはいけない。
何の根拠もない直観だけど。
俺は手入れされた美しい黒髪を撫でて、そのまま腕を新出の背中に回した。
「いいですよ」
これは敵意がないことを示すために、動物が腹を見せるみたいなものだ。
新出は再び肩に歯を立てる。
望むところ。
根性だけが俺の取り柄だ。
ばちゅっ、ばちゅっ、ばちゅっ、ばちゅっ、ばちゅっ
「あっ♡ぁん♡はぁ、んっ♡ぅ、ぁ、んっ♡あっ♡あっ♡」
荒っぽい腰づかいでも、確実に快感へと導かれていく。
お腹のほうを執拗にぐりゅぐりゅ押しつぶされ、勃起したちんこを乱暴に扱かれ、絶頂へと追い立てられていく。
「あっ♡あ、イくっ♡や、んぅ♡イく、イく、からぁっ♡あ、あ、あ……っ、ッ♡♡♡」
頭の中が真っ白にはじけ飛ぶ。
前だけでイく時以上に強い快感。
びゅる、びゅる、と精液を吐き出しながら、身体が何度も脈打つ。
中がぎゅううっと締まる。新出が苦しそうにうめき声を漏らした。
「あっ♡あ…♡はぁ……♡はぁ……♡」
射精が終わっても、腰がヒクヒク揺れて甘い快感が続いた。
酒を飲んだ時のような、心地いいぼうっとした温かさに包まれる。
「……っ、勝手に休んでんじゃねぇ、よっ」
「あッ♡」
ばちゅん、ばちゅん、ばちゅん、ばちゅん
力の入らない身体に繰り返し杭を打ち込まれる。
強すぎる快感に。新出の身体にしがみつこうとしたが、この身体に爪を立ててはいけないことに気付いてシーツを掴んだ。
「……くそっ……、ムカつくっ」
「あっ♡ひっ♡あっ♡あッ♡アッ♡んぁっ♡」
奥を突かれ、何度か意識が飛びそうになった。
新出の表情からも余裕がなくなってくる。白い肌を伝う汗が、ぽたぽた垂れてくる。
もう終わりが近いことが伝わってきた。
ばちっばちっばちっばちっばちっばちっ
腰を打ち付ける間隔が早く、浅くなっていく。
「く……っ、は、……っ」
「ぅあっ♡ぁ……♡」
新出はちんこを引き抜くと、俺の腹に吐精した。
散々中を犯していたものがなくなり、穴が寂しそうにきゅうきゅう収縮している。
部屋には、二人分の荒い呼吸だけ。
どっと疲れが押し寄せてきて、身体が重くなる。意識が沼に引っ張られていくみたいに遠のいていく。
「あらいでさ、ん……」
何か言わなくちゃ、と思ったけれど、堪えられなかった。
最後に記憶に残っているのは、相変わらず眉間にシワを寄せた新出さんと、舌打ちの音だけだった。
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