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「うーわ。今日も絶好調にしみったれた顔してんね。」
聞きなれたその声に、俯いたまま間の抜けた返事をする。
「お〜い。百合斗く〜ん。」
何度も呼ばれるので、仕方なく顔を上げる。
目の前には、芸能界にいても違和感のない整った綺麗な顔。
楓の顔をじーっと見ながら考える。
俺、こいつではヌけないよな。
何?と言いたげな顔でこちらを見つめ返す、間抜けな皐月の顔にふと気が抜けてしまったのか、言わなくてもいいことを言ってしまった。
「お前さ、めっちゃ告られてんじゃん」
「え、なにいきなり。まぁ、告られてますけども。」
「うざ。付き合わないわけ?」
「まぁ、好きじゃないのに付き合うのも悪いしね。てか、うざって言った?今うざって言ったよね?」
チャラチャラしてる癖に、こういう所はしっかりとしているからこそ、楓には友達が多いんだろう。
「お前だったら、選び放題なのに。」
「それ褒めてる?それ言ったら、百合斗のこと狙ってる子も結構いるけどね?」
「百合斗、大学入ってから彼女作ってないしょ。誰か、紹介しようか?」
「いい。」
「で、何に悩んでるわけ?」
本題に入りずらく、曲がりくねって話題提示をしていた俺に気付いたのか、優しい笑みを向けて、俺に尋ねてくる。
「んー。悩んでるわけ俺は。」
「うん。だから、何に悩んでるのさ。」
「はぁ。モテる男には分からんだろうなぁ。」
「なに。好きな人でもできたわけ?」
楓は変に勘の鋭いところがある。
問いに無言を貫き通していると、皐月がまた口を開く。
「その様子だと、まだ気になる人レベルだね?」
「.................分からん。」
「なんも分からん!!」
そう言い、ガシガシと頭を搔く。
俺の手を制止し、楓は言う。
「百合斗。意外と人間って単純だよ。」
「難しく考えんな。お前馬鹿なんだから。」
何でこう一言余計なんだろうか。
楓の言っている意味も分からず、ムスッと楓を睨みつける。
「百合斗。」
突然、改まって真剣味のある口調で俺の名前を呼ぶ。
楓を見て無言の返事を返す。
「お前、その人とあれこれしたいわけ?」
「..............は?」
未だ、楓の顔は発した言葉とは裏腹に真剣な表情をしている。
何を言っているか分からず、思わず聞き返す。
「何言ってんの?」
「だ~か~ら!その人とキスとかセッ」
周りに人がいるこの状況で、声の大きさを考えず、言葉を発している楓の口を塞ぐ。
俺に口を塞がれながらも、まだ何かモゴモゴと言っている、楓を睨みつける。
「周りの状況考えて話せ!!」
俺が口を塞いでいた手を退けると、反省のはの字もないこいつは、また畳み掛けてくる。
「で、どうなの?想像出来る?」
しょうもないと思いながらも、自然と頭の中には、漱石さんの顔とあれこれが浮かんでくる。
俺は、あんまり顔に出ないタイプなのだが、幼ない頃から一緒にいる楓にはバレバレらしい。
「ね?そういうこと。」
俺が何日も悩んでいた、この気持ちをこのたった数分で解決しやがった楓が、憎たらしく少し不貞腐れる。
「上手くいったらちゃんと紹介しろよ~」
ニコッと屈託のない笑顔を放ち、そう言う楓は、憎たらしくも憎めない。
男なんだよな、と内心思いながら、伝えた時楓にどう思われるか不安になる。
幼い頃から一緒に育ってきたからこそ、突き放された時の悲しみは倍だろう。
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