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昨日のことが嘘のように、いつも通りの日常が戻ってくる。
「おっはー。百合斗。」
「おは。」
「なに、機嫌良さそうじゃん??なんかあったん?」
「別に何もないけど」
漱石さんの事を言った方がいいかなぁ。
否定するようなやつじゃないし、別に言ってもいいんだけどなんか恥ずかしくない!?
「ふーん。彼女できた?」
勘の良い質問をされ、一瞬体が強ばる。
「出来てないけど..........?」
恐る恐る楓を見ると、少し色素の薄い赤銅色の瞳が、まるで心を見透かしているように、こちらをじーっと見てくる。
「彼氏か。」
「ガタッ!」
「なっ!なん!」
「ビーンゴ」
ウインクしながら、こちらを指さしてくる。
言わずもがな、ニヤニヤ顔で。
「百合斗きゅんもそういうお年頃でちゅか〜」
「..........引かないの。」
あまりにもいつも通りの楓に、ついそう言うと楓は伸びをしながら間抜けな返事をする。
「なんでー?親友に女だろうが、男だろうが好きな人出来たら嬉しいっしょや〜」
綺麗な顔とは似合わず、屈託のない笑顔で笑う楓につられ、つい頬が緩む。
「あ、俺先生に呼ばれてたんだった。ちょっと行ってくる。」
「ん。行ってら。」
実は、心のどこかで不安になっていたのか、一気に体の力が抜ける。
「はぁぁーーーーー。しんど。」
*
今日は、午前で授業が終わりなので、昼過ぎにはもう家に帰っていた。
「バイトでもしよっかなー。」
親からの十分すぎる仕送りのお陰で、バイトをしなくても何不自由ないのだが、なにより暇だった。
楓と違い、友達も少なく、放課後暇を持て余している。
求人広告を調べようとしても、その気になれなく、携帯を放り、ベッドに倒れる。
「あっ」
思い立ち、急いで玄関のドアを開け、隣の部屋のチャイムを鳴らす。
「はい。あれ、百合斗くんだ。どうしたの。」
ズキューン!!
...恋人になった、漱石さんの破壊力。
「?おーい。百合斗くーん?」
「!あの、これ、返しに来ました!ありがとうございます!!」
そう言って、漱石さんに借りていたあの小説を手渡す。
「あー。忘れてた。わざわざありがとね。」
「こちらこそです!」
「あー、他にも読む、?」
「!!はい!」
「じゃあ、ちょっと上がってもらってもいい?」
「玄関で立ち話もなんだし。」
「え!はい!お邪魔します!」
「適当に座ってて。」
そう言って、キッチンに行ってしまった。
あの日以来の久しぶりの漱石さんの部屋。
恋人として、初めての漱石さんの部屋。
少し、ドキドキしながらソファに腰を下ろす。
あの時と、特に代わり映えない内装だが、何故だか輝いて見えるのは、やっぱり恋人になったからだろうか。
「ん。お待たせ。」
どれ読む?と数冊、手に持った小説をフリフリとしながら俺に聞いてくる。
と言っても、題名だけじゃどんな話かも分からないので、1番初めに目に付いた、前回借りた真っピンクとは正反対な、澄んだ青空色の表紙を指さす。
「おー。これね。」
「どんな話ですか?」
「んー。純愛?」
前回、官能小説を選んだ時散々揶揄われたので、純愛と聞いて内心ホッとする。
「まぁ、男同士のだけどね。」
そう言って、ニヤリと悪い笑みを浮かべる漱石さん。
「違うのにする〜?」
ニヤニヤしながらそう聞いてくる漱石さんに対し、ここで違うのにしたら、意識していると思われるので、勢いよく答える。
「いや!それで大丈夫です!」
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