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rev .0-①
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東京霞ヶ関、警視庁本部庁舎。
「いつまで彼らを縛るつもりかな」
夜も更けた頃、草薙はある人物に電話をかけていた。
「犯罪者を自由にさせているのに、縛るなんて言い方、おかしくないですか?」
そう言って、男は笑った。
「証拠もないのに犯罪者と言い切るのは、無理があると思うが」
「そうでした、特別捜査協力者でしたね。大変失礼いたしました、草薙警視総監殿」
上辺だけの会話を続けながら草薙は考える。自分は判断を見誤ったのか、この男に踊らされていただけなのだろうかと。
「君は人間の本質そのものをよくわかっていないようだね。世界は正義と悪という二択ではないのだよ」
「わかっています。わかっているからこそ、野放しにしているのですよ」
やはり、身を持って知ってもらうしかないようだな。
心でそう呟いてから、草薙は目の前に佇む男に視線を向ける。男は右手にスマートフォンを持っており、画面をこちらに向けていた。
「あれが全てだと思っているのなら、痛い目に遭うよ」
「ご忠告、感謝いたしますよ」
「せいぜい気を付けたまえ」
相手の返事を聞くことなく、草薙は一方的に電話を切った。
「彼をどう思う、レイ君」
草薙の目の前に佇んでいるのはハナムラのナンバー3のレイだった。
「今の俺はボスとあんたの橋渡し役であって、意見をする立場にない」
花村と会うのはもう少し先になると思っていたが、そうもいかない事情が出来た。彼との会話を聞かせるべく、レイに間に入ってもらったのである。
「何を言ってもいい、草薙の質問に答えてくれ、レイ」
レイの持つスマートフォンから花村の声が聞こえた。すると彼はわかりましたと言って、草薙を見据えた。
「総監にここまで切り込むのは確かに面白い。だが、俺らをなめてかかってるのは気に食わねえな」
「彼がシラサカ君を引き止める理由をどうみる?」
「シラサカを押さえておけばなんとかなると思ってのことだろう。目の付けどころは悪くないが、シラサカは勿論、カナリアに対しても甘く見過ぎているな」
レイの言葉は的確だ。おそらく花村も同意見だろう。
「それを踏まえた上で、君達に仕事を依頼する。彼を処分をしてくれないか」
何事にも動じないレイが目を丸くする。こういう表情をみると、年相応だなと草薙は思った。
「田中を、大阪府警副本部長を俺達でバラせっていうのかよ!?」
「そうだ。勿論、金は払う。彼をこのままにしておけば、ハナムラにとってマイナスだということはよくわかったはずだよ」
生と死の狭間に立つと本性がわかる。自分の目が正しいか否かもわかるし、間違いであればこのまま消え去ればいい。
「……荒療治か。おまえらしいやり方だな」
黙って聞いていた花村が発言し、クスリと笑った。草薙の考えを察知したらしい。
「いいだろう。我々としても、先を見据える良い機会になる。段取りはレイ、おまえに任せる」
「ですが、ボス、相手は!?」
「契約不履行以外は変えられない。わかっているはずだろ、レイ」
最初の言葉で意図を察したらしく、レイの顔つきが変わる。彼はわかりましたと言葉を返した。
「無茶苦茶だな」
冷静さを取り戻したレイは、草薙に視線を向けた。
「私が成すべきことは終わったからね」
さあ、ゲームの始まりだ。
心で呟いて、草薙は笑った。
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