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rev .20
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大悟と田中の対面の場に現れた乱入者は三名。玄関にひとり、中央にひとり、シラサカ達がいる窓際付近にひとり。どれも血気盛んな若者達で武器を手にしたことで、自分達が支配者であると錯覚しているように見えた。通常であれば、こういう輩は叩けばすぐ落ちる。圧倒的な力の差をわからせれば、逃げ出すはずである。
「はいはーい、生き残りはここだぜ」
シラサカは両手を挙げ、ひとりの若者の前に姿を見せた。
「命乞いなら受け付けねえぞ!」
若者は、武器を持つ自分が優位であると思い込んでいる。引き金を弾けば、目の前のシラサカはすぐ倒れるはずだと信じているから。
「命乞いするのはそっちじゃねえの。俺のハニーに怖い思いさせたんだ、責任取れよ」
シラサカは両手を挙げたまま、ゆっくりと男に近づいていく。
「何言ってんのかわかんねえよ。頭おかしいのか、オッサン!?」
こいつ、関西弁じゃねえな。
摘発現場の若者はカズミと同じ話し方だったが、目の前の若者は標準語である。そうこうするうちに、右耳の通信機からマキの声が聞こえてきた。
『お待たせ、サカさん、いつでも出られるよん』
この口振りからして、マキは現場のカフェレストランの入口にいるはず。
『レイの指示で弾は玩具だから、我慢してねん』
実行犯でも警察でもない人間が、街中で実弾を放てば大問題になる。そこを踏まえてのことだろう。
こんだけやらかしてんのになぁ。向こうが本物で、こっちが玩具ってどうよ。
内心不満を抱えつつ、レイの指示なら従うしかないと、シラサカは気を引き締める。
愚痴っても仕方ねえ、戦闘開始だ。
「人の決め台詞をパクってんじゃねえぞ、クソガキ」
あからさまに口調を変えた。こちらが上だと言わんばかりに、シラサカはこう挑発した。
「ガキはガキらしく、家に帰ってパパとママの脛をかじってろ」
真に受けた若者は怒りを露にする。
「てめえ、ぶち殺してやる!?」
若者が銃口向けたのと、上から拳銃が降ってきたのはほとんど同時だった。
「ほい、商売道具!」
「ナイスタイミングだぜ、マキ!」
拳銃を受け取るのと、若者が引き金を弾くのもほとんど同時だった。シラサカは発射された銃弾を軽々と避け、右手の拳銃の銃口を若者に向ける。
「おまえ、どこからそれを!?」
若者が怯んだ隙にシラサカは距離を詰め、懐に飛び込む。
「そんなんじゃあ、俺は殺せねえなぁ」
正面から拳銃を体に押し付けると同時に左手で頸部を締め上げる。
「や、め……ろ、ぐぁっ!?」
このまま絞め殺すことも出来るが、大悟も田中もいるため、気を失う程度で留めておくことにする。
「へー、やるじゃん。おまえも仲間にしてやるよ」
言葉が聞こえたのとシラサカが振り返るのは同時だった。騒ぎを聞きつけた中央にいた若者は銃ではなく注射器を持っており、シラサカの右腕に服の上から突き刺していた。
「ちょっと、何してくれてんのさ!?」
やってきたマキは若者を後ろから羽交い締めにする。
「これでエーデルシュタインのコードネームになれるぞ、光栄に思え!」
若者が発した言葉の衝撃に、シラサカはマキと顔を見合わせる。
「自分が生きるために人を殺す、それが世界の──!?」
全て言い終える前に、シラサカは若者の頸部を圧迫し意識を消失させる。その後、すぐさまマキに問いかける。
「もうひとりは?」
「玄関で眠らせてる。ねえ、今の主張って……」
マキに聞かれるまでもない。暗殺組織エーデルシュタインのスローガンである。
「今の話、警察は勿論、ハニーやカズミにも黙っていてくれ」
「それはいいけど、レイに話さなくていいの?」
「勿論話すよ、俺とレイとクロードの三人でな」
あいつの話が本当なのか、もう一度確かめねえとな。
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