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rev .24
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医師の池田が帰った後、クロードはシラサカ達の前で組織の人間に連絡を取り、今回のことを伝えた。
『へー、そんなことになってんのか。俺も日本に行こうかな、なんか面白そうだし』
相手はコードネームCだった。組織の中で唯一信頼しているメンバーで、クロードがZになれたのは、Cの尽力があってのことらしい。
「その様子だと知らないってことか」
ちなみに、彼らは英語で話しているが、ここにいる全員が理解出来るため、全く問題なかった。
『知らねえな。上はゴタゴタしてるし、K絡みで三人減って補充も済んでいないだろ。今回の事で、Kに手を出すなは暗黙の了解になったからな』
Cは饒舌らしく、聞かれていないことまでペラペラと話した。
『てかさ、おまえ、Kと接触しまくりじゃねえか。殺されたりしねえの?』
「まあ、なんとかな」
本人を前に言いにくいのか、クロードは言葉を濁した。
『それでも心配だな。やっぱ俺、日本へ行くわ』
「いや、だから俺は──」
『観光も兼ねてだよ。俺が行くまで死ぬなよ、クロード』
Cはクロードの答えを聞くことなく一方的に言い放ち、電話を切った。なかなかの自己中である。
「おいおい、本物までやってくるのかよ」
シラサカは頭を抱えた。クロードの疑いは晴れたものの、エーデルシュタインのCが日本へやってくるきっかけを与えてしまったから。
「すまない。Cは好奇心の塊みたいな奴で、争い事に自ら首を突っ込みたがるんだよ」
『そんな奴でも、情報は確かなんだな?』
通信機越しにレイが確認を取った。
「ああ。Cが言ったことは組織の現状だからね」
「これでクロードのことは信用してくれるよな、ナンバー3」
今度はカズミがレイに確認を取った。
『そうだな、今回の件に関しては信用してやる。シラサカとカナリアは部屋に帰ってマキと合流。藤原はクロードと部屋で待機、というか寝ろ』
前半のレイの言葉に喜んだカズミだったが、最後で機嫌を害した。
「なんか俺だけ疎外感あるんやけど」
『当然だ。おまえはハナムラの人間ではないからな。クロード、藤原を見張っとけよ』
レイはこういう線引きに関してはきっちりやる。勿論、カズミの身を案じてのことだ。
通信が切れた後も不満を口にするカズミを宥め、シラサカは大悟と共に部屋を出た。
『シラサカ、カナリア、藤原の部屋を出たか?』
エレベーターホールに辿り着くと、レイが通信機で話しかけてきた。
「うん、今からエレベーターに乗るところ」
大悟が答える。上へ向かうエレベーターがまもなくやってきたが、ひとまず乗らないことにした。
『部屋に帰ったら、まず岡崎の対応だ。ここで引かせるか、あるいは関わらせるか、岡崎本人の覚悟を問い質せ』
エーデルシュタインという名前が出た以上、ここから先は一筋縄ではいかなくなる。岡崎はシラサカのお目付け役として側にいるだけなので、今離れれば、なんとかなるだろう。
『それをやるのはカナリア、おまえだぞ』
レイの言葉に、シラサカは大悟と顔を見合わせる。
「なんでハニーなんだよ」
『俺らだと言い方がキツくなるが、カナリアならソフトになる。岡崎はナオや蓮見さんとは違うんだ。俺達がこちらの世界へ巻き込んだことを忘れるなよ』
言いたい事はわかるけど、あの顔でキツいだとかソフトだとか関係ねえだろ。
厳つい岡崎の顔を思い浮かべ、心の中で突っ込むシラサカだった。
「師匠、大丈夫でっか!?」
部屋に戻るやその岡崎が寄ってきて、顔を近づけてきた。
「顔を近づけてくるな、気持ち悪いんだよ!?」
怒号を浴びせてから、シラサカは一歩後退し、岡崎から離れる。隣に大悟が居なければ、蹴り飛ばしていただろう。
「いやはや、いつもの師匠で安心しましたわ」
岡崎は本気で心配していたらしく、ほっと胸を撫で下ろした。
「Kを心配してのことなのに、その態度はないでしょ!?」
大悟には怒られたが、男に迫られるなんて有り得ないのだから仕方がない。
「はいはい、ごめんなさいね、ツトムン君」
適当に謝ると、クスクスとマキの笑い声が聞こえてきた。
「サカさん、カナカナ、おかえり。その様子だと大丈夫そうだね」
マキはリビングルームのソファーに座り、コーヒーを飲んでいた。自分と大悟が宿泊しているこのスイートルームにもカードキーの予備が一枚あるため、彼らは室内に留まっていたのだ。
「おまえら、くつろぎすぎだろ」
室内に備え付けてあるコーヒーメーカーを使用したようだ。向かいには空のコーヒーカップがあったため、岡崎も飲んだらしい。
「洗ってくるね」
大悟が空のコーヒーカップを持って席を外すと、すんませんハニーさんと言って、岡崎もついていった。
「なかなか帰って来ないからさ、ツトムンが心配してたよ」
マキはニコニコ笑いながら、右耳を指差す。カズミの部屋での話を通信機で聞いていたということだ。
「オッサンの対応どうするよ」
シラサカはマキの側に座り、小声で話し始める。
「まずはツトムンがナオと同じ役割を担ってくれるかどうかだね。どちらにせよ、あいつのことは伏せるべきだと思う」
あいつ=クロードだ。マキは彼を名前で呼びたくないらしい。
「ナオは草薙に丸め込まれてだし、ハスミンは公安にいて僕らのこと知ってたけど、ツトムンは違うからね」
何かと邪険にしているが、別に岡崎を嫌っているわけではない。むしろ自分達に近づくことで、彼の警察官としての人生が狂うことをシラサカは恐れていた。
「ここで引き下がってくれれば、奴のキャリアに傷がつくことはないんだがな」
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