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rev .42
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シラサカは大阪府警の本部長の倉田とホテルのカフェレストランで面会することになった。冒頭、倉田はシラサカのことを「花村の秘蔵っ子」と言った。大悟とカズミが聞いていることを知らないからこその発言だが、大悟はともかく、カズミはハナムラの人間ではないため、これ以上の話は聞かせられない。
どこかのタイミングでカズミを外さねえとな。ハニーと一緒にいる以上、カズミだけってわけにはいかないよな。
そんなことを考えつつ、シラサカは倉田と向き合っていた。案の定、彼は田中を助けろと言ってきたが、シラサカはノーを突きつけた。
『カナリア達との通信は遮断した。ここから先は好きに話していいぞ』
左耳に突っ込んでいた通信機からレイの声が聞こえた。彼もこの会話を聞いており、シラサカの考えをよくわかっていた。
オーケー、オーケー、さすがレイだな。どんな手を使ったのかはしらんが、これで好きに話せるぜ。
「そんなことより、あんたとボスの関係性を知りたい。俺のことを花村の秘蔵っ子と言うくらいだ。かなり前からボスのことを知ってるんだろ」
シラサカの言葉に倉田は迷いを見せる。警察官僚だけあって、外見からエリートの風格が滲み出ているが、警戒心を抱かせないためか、柔らかい印象を全面に押し出している。草薙が頼みを断われないと言っていたことからしても、タヌキ以上のタヌキなのだろう。
「岡崎君、席を外してくれないか?」
倉田は右横に座る岡崎を見て言った。
「で、ですが!?」
岡崎はわかっている。自分を退席させる=ハナムラに殺されてもいいという意味であることを。
「君に聞かせられる話ではないからね。私なら大丈夫だよ。いざというときの切り札はあるからね」
切り札=花村の過去という意味だ。シラサカはニヤリと笑った後、こう言った。
「そういうことならこちらも手を打とう。マキ、おまえも席を外せ」
「りょうかーい。邪魔者は退散、退散」
シラサカの右横に座っていたマキが素直に応じたこと、更に倉田に念押しされたこともあり、岡崎は後ろ髪を引かれながらその場を後にした。
「君の質問に答えよう。花村君が警察官を目指していたことを知っている。これでどうだろうか」
倉田はシラサカをまっすぐ見つめて言った。
「ボスと草薙の関係も知ってる。俺が断ったとしても、ボス経由で揺さぶりをかける。結果的に、俺達は引き受けざるを得なくなる。そう言いたいんだろ」
事の発端は、エーデルシュタインのコードネームAの抹殺に大阪府警の武器を借りたことだ。急遽来阪することになったレイに手を貸したのも、草薙だけでなく花村から倉田に話があってのことだろう(詳細は憂いのファンタジア第二部(第101話後編)・(第100話後編)参照)
「そこまでわかっているなら、なぜこんな真似を?」
驚く倉田を真正面に見据えつつ、シラサカはテーブルに両肘をついて言った。
「俺がハナムラのナンバー2、つまりボスに次ぐ立場だということは聞いてるよな。ボスにはハナムラグループとしての仕事がそれなりにある。だからこそ、ナンバー2にもそれなりの権限がある。俺の独断で、今あんたを始末してもいいとかな」
シラサカが殺気全開で笑いかけても、倉田は動じなかった。まもなくふっと笑い、こう呟いた。
「下手な脅しは通用しないということか」
「そうだ。俺はボスや草薙と違って、あんたに何の感情もない。さっきの話からして、あんたはタヌキの本心を理解しようともせず、哀れんでいただけ。ボスや草薙のことも他人事だと思って線引きしている。だからこそ、救ってくれなんて言葉が出てくる」
花村経由でシラサカの耳に届けば、こうはならなかった。それだけ倉田も焦っていたのだと思う。
「そんな奴に俺は屈しない。死神の助けを借りたいなら覚悟を決めろ。俺達と同じ場所まで下りてこい」
草薙が全権を持つ警視庁の仕事を請けるのは、そこをきちんと理解しているからだ。大前提として、ハナムラは警察の下請けではないし、表舞台に立つべき存在ではないのだ。
「君の言うとおりだね。私の考えが甘かったよ」
倉田は反論することなく、シラサカの言葉を受け止めた。少し考えた後、彼はこんな言葉を発した。
「改めて、私からハナムラへの依頼ということで考えてみてくれないか? 大阪府警副本部長の田中誠史の警護、いや、ポディガードをお願いしたい。報酬はそちらが望むものでいい。金でも私の命でも好きにしたまえ」
オーケー、オーケー。後はレイがなんていうかだが……
『大阪府警の本部長にここまで言わせれば十分だと俺は思うが?』
抜群のタイミングで声が聞こえてきた。シラサカ同様、レイも納得したようである。
「交渉成立だ。タヌキのボディーガードを引き受けてやる。報酬に関しては事が片づいてから請求する。後はウチのナンバー3の仕事だな」
シラサカは席を立つと同時に、倉田のスマートフォンから着信音が鳴ったのは言うまでもないだろう。
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