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1#悲しみ
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「ちょっと彼を迎えに行ってくるね――」
姉の奈緒は、そう言って家から出て行くと彼を迎えに行った。そして、迎えに行く途中で事故に遭った。姉はただ横断歩道を普通に渡っていただけだ。
それなのに命は呆気ないものだ。まるで咲いている花から、綺麗な花びらが儚く散るように、呆気なく死んでしまった。
事故の原因はトラックのタイヤが偶然外れて、その外れたタイヤが横断歩道を渡っていた姉の身体に直撃した所為だった。その時に、打ちどころが悪かった為に姉はその場で即死した。
警察から連絡が来て、急いで病院に駆けつけた時にはもうすでに遅かった。姉は冷たい霊安室に遺体となってストレッチャーに乗せたられたまま、顔を白い布で覆われていた。
線香の臭いに包まれた部屋の中で、姉は寂しく眠りについていた。警察に身元の確認で顔見せられた時、俺はその場で立ったまま絶句した。
顔には酷い傷がついていた。あんなに美しかった姉がまるで別人のように見えた。そして、体についた傷の跡が痛々しかった。足の力が抜けて崩れ落ちるように椅子に座ると、その光景を傍で呆然と見ていた。
あの時まで普段どおりに元気な姿だった姉が、次に会った時にはボロボロに変わり果てた姿で突然亡くなってしまった。俺は冷たくなった姉の手を握り、悲しみに胸が引きちぎられた。
この世で唯一の肉親であり。ずっと傍らのような存在だった姉を突然、失ってしまい。天涯孤独の絶望に突き落とされた。
その時は声にならない声で泣き叫んだ。冷たくなった手を握りしめながら『姉さん、おいて逝かないで!』と泣き叫んだ。心がバラバラになりそうな時、そこに姉の恋人で『夫』である優也さんが駆けつけに来た。
彼は亡くなった妻の体を抱きしめて、俺の前で悲しみに打ちのめされたように泣いていた。その姿を見て、俺も辛くて悲しくて彼と一緒に泣いた。
あの日のことは一生忘れない。いいや、決して忘れることは出来ない。それ以来、俺は彼と一緒の家に住んでいる。
俺が小学生の頃に両親は離婚して別れた。そのあと父親に引き取られて、姉と父と俺の3人で暮らしていたが、2年前に父は病気で他界した。それから姉と2人で暮らしていたが、その姉も不幸な事故で突然亡くなり。俺だけ家に取り残されたけど、一人にはならなかった。
姉の夫で俺にとって義兄にあたる『優也』さんが傍に居てくれたから、俺は天涯孤独を味わわずに済んだ。
優也さんは俺の姉を亡くしても、変わらずに接してくれた。そして、そのままうちに籍を入れたままだった。もうとっくに籍を抜いてもおかしく無いのに。彼は妻の奈緒を忘れられないのか、ずっと思ったまま引き摺っていた。
そんな可哀想な彼を見て、始めは同情していたけど、段々と一緒に居る事で自分の気持ちに変化が生まれた。俺は気づいたら、彼がの事を愛してしまった。それが、俺の『罪』だった――。
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