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#3溢れる気持ち
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――その日の夜、夕飯を食べた後に、シャワーを浴びて湯船に浸かった。俺達は相変わらず一緒に住んでいた。
優也さんが作る料理は何でも美味しかった。とくに今日の肉じゃがコロッケは絶品だった。美味しくて思わず、5個も平らげてしまった。
俺が肉じゃがコロッケを一人で沢山食べていると、優也さん目の前で笑っていた。そして、呆れた顔で『俺の分も食べるか?』と言って、箸で摘んでお皿の上に乗せてきた。
優也さんは俺にとっては、優しい兄のような存在を感じていた。自分には姉しかいなかったから、小さい頃から兄がいる兄弟が羨ましかった。だからついつい、甘えてしまう時がある。
結局その後、一人で全部食べてしまった。彼に食いしん坊だと思われてもしょうがない。そして、不意に気がついた。優也さんが作った肉じゃがコロッケは姉さんの好物だった事を――。
そう思うとつまらない事でモヤモヤした。彼が作ったのは俺の為じゃなく、姉さんの為に作ったんだと感じると胸がギュッと切なくなった。
「……俺って心が狭いのかな。あの二人は夫婦だったんだし。最愛の人が亡くなっても、その人の好きだった物を食べさせてあげたいって気持ちは別に変でもないわけじゃん。でも、何でこんなにも気持ちがモヤモヤするんだろ。風呂に入ったらスッキリすると思ったのにな……」
湯船の中に沈むと口でブクブクさせながら考えた。俺の頭には常に彼がいた。優也さんが家にいてくれるだけでも嬉しいのに、俺ってば欲張りだ。どうしてこんなに『好き』って気持ちが止まらないんだ。彼とそれ以上を望んじゃいけないのに……。
「俺って嫌な奴…――」
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