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二人の朝
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ホーレットが起きたのは朝の六時ぴったりだった。服は昨日のままだけどきっちりと服を着てキッチンへやって来た。
「おはよう、ホーレット」
「おはよう。寝坊しちゃったかな」
「俺が早いだけさ。朝飯は?」
「少しだけ」
完成したプッタ・ネスカを皿に盛り付ける。香りを鼻腔いっぱいに吸い込んでホーレットは何時ものように柔らかく笑った。
「美味しそう」
「美味しいんだよ」
木造の椅子に座り向かい合う。テーブルにはプッタ・ネスカと炭酸水。ホーレットの神への祈りを聞いた後二人で微笑み口に運ぶ。
「あ、本当だ。美味しいね。」
「だろ」
「本当に美味しい。」
嬉しそうにパクパクと食べてもらえると作った方としても嬉しいものだ。炭酸水を飲みながら自分もパスタを食べた。庭には山鳥がいてピルルと鳴き声を奏でる。
「ここは平和だね」
「教会の方が平和じゃないのかい」
「まさか。…実を言うとね?僕は一昨日まで神父だったんだ」
「一昨日まで?」
「si」
どういうことだい?と聞く前にホーレットが食べ終わった皿をみた。おかわりは?と聞くと少しだけ遠慮の色を見せるが断らない。
「grazie、とても美味しくてついつい食べちゃうね」
「そうか?ならよかった。で…一昨日までって?」
「嗚呼、神を冒涜してしまったんだ。…君はDioやangeloを信じるかい?」
「まさか。それにうちは昔からカトリックなんだ」
そう。と、相槌をうってホーレットは自分が孤児だと伝えた。教会の椅子の下に置き去りにされたという。酷い人がいるもんだ、と言うとホーレットは「何か事情があったんだ。仕方ない」と言った。
「で、神を冒涜ってのは?」
「好きな人がいたんだ。教会の近くに住む羊飼い。彼を愛してしまったんだ」
「それがばれたと?」
「si。後悔はしてないけどね。蛇に唆されて林檎を食らっただけさ」
「Adam and Eve?」
「君はなんでも知ってるんだね」
まるで蛇みたいだ。冗談めかして笑うから手を伸ばして頬に触れた。いつもなら身体を重ねて笑いあい、そして別れるはずなのに。昨晩の出会いは俺に幸福でももたらすのだろうか。
「で?ホーレット。行くところは?」
「ないよ。とりあえず働かないと」
「なぁ、ホーレット。うちにすまないか?」
「冗談だろう?」
「本気だよ」
部屋は余ってるし、家の掃除と洗濯をやってくれたら住み込みとしてはフェアじゃないか?
提案を値踏みするように俺をじっと見つめた後、窓の方を向いた。いつの間にか山鳥は二羽になってじゃれあっていた。
「…この家は、平和だね」
その返事が si の意を含むということは、なぜだかすぐに伝わった。
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