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人形はただの我儘な子供と一緒に生きることにした。
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「あの脚は?」
「え?」
「零次の脚が、俺の家に送られてきた」
「ええ嘘! 俺親父に送ったのに! 俺が死んだのを偽装するために」
大声で、心底驚いた様子で零次は言う。
「零次が直接父親に送ったんじゃないよな?」
「もちろん。親父の知り合いの潜水士に大金を支払って、お願いしたんだよ。あの脚を証拠に、俺が死んだって嘘を貫き通すことを」
「大金って、いくらくらい?」
「十万。ただまあ俺はその人から保険証も貸して貰ったから、それぐらいの金がかかってもしょうがないかなって」
保険証を偽装したから、父親にバレずに治療できたのか。
「ふーん。その人よく保険証貸してくれたな。父親の味方なのに」
零次が目を細める。
「ああ、その人は昔から俺に優しくしてくれてたから。潜水士なんてやってると、子供の遺体とかも何度も目にするから、俺がいつかそういう風になったらって、想像しちゃってたんだろ。まあ、だからって俺を虐待から救おうとはしてくれなかったみたいだけど。俺の味方をして親父の恨みを買ったら、酷い目に遭う可能性があったから」
「それってただの……」
「そ。偽善者。だから金払ったんだよ。無償だと、ちゃんと嘘貫き通してくれるか分からなかったから。……まあでも、その人に無事で良かったって言われて抱きしめられた時は、少しだけ嬉しかったかなあ。その人、よく車の中にいた俺の髪整えたり、俺が好きな甘いものを親父に内緒でくれたりしたから」
「……それはただのご機嫌取りだろ」
いかにも偽善者がやりそうなことだ。
「でもそのご機嫌取りが、昔の俺にとって、最高のものだった。ちっちゃい頃はまさかそのご機嫌取りが同情心でやってるものだなんて、考えもしなかったから」
確かに中学生くらいだと、同情されてるなんて想像もしないのかもしれない。ましてや監禁なんてされてたら、同情の意味を教わることもないだろうし。
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