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やっぱ、泣くんだな <Side C
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重厚なアンティークのデスクに腰かけ、原井を誘う。
「抱け」
誘うと言えば聞こえはいいが、要は命令だ。
面倒そうに息を吐いた原井は、柔らかな手付きで俺のジャケットを剥ぐ。
するりと寄った顔に、重なる唇は、淡く俺を貪る。
そろりとこめかみから差し込まれた原井の右手が、俺の髪を弄ぶ。
中途半端に伸びた柔く細い俺の茶色いクセっ毛が、原井の指先に絡みつく。
唯愛もよく、俺の髪を指先に絡めて遊んでいたっけな……。
唯愛の声が、脳内で再生された。
『オレのものになる気になった?』
なりてぇよ。なりてぇに、決まってんだろ。
でも俺は、本心から瞳を逸らせ、唯愛の言葉を突っ跳ねる。
『お前のもんには、ならねぇよ』
放った声は、胸の底にうっすらとした傷を刻んだ。
可愛くて、愛しくて、大切で。
大事に抱き締め、腕の中に囲ってしまいたい。
お互いにお互いを、必要として。
お互いにお互いを、愛しているのに。
そこには、〝血縁〞という壁がある。
男同士の恋愛ですら奇異の瞳で見られるのに、それすらも霞んで見える〝近親相姦〞という禁忌。
いつか、飽きると思っていた。
いつか、気づくと思っていた。
俺なんかより、女の方が魅力的だ、と。
飽きてくれよ。
俺なんて、捨て置けよ。
俺を想う心なんて、綺麗さっぱり忘れ去っちまえ。
どうせそこには、痛みしかない。
俺を想う唯愛の好意も。
俺が想う唯愛への愛情も。
ぜんぶ、消えてなくなっちまえばいい。
俺の唇を喰らっていた原井の顔が、離れていく。
「やっぱ、泣くんだな」
原井の武骨な指先が、俺の頬を荒く撫でる。
音もなく流れた涙が、拭われた。
「俺、今日、頑張ったんだけどね。無駄骨か……」
涙の痕を消し去るように、原井の舌が俺の頬を舐め上げた。
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