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可愛い=弟 2
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「こちらです」
スタッフの先導でたどり着いた会場には既にたくさんの人で賑わっていた。丁寧に去っていったスタッフに軽く会釈をして百環と紅葉は会場へと足を踏み入れる。
「さー、百環食べるわよ」
普段特に自分から甘いものを食べる方では無い紅葉だか、甘いものは嫌いではないし何より意図せずではあるが百環と2人っきりのデートである。これを楽しまない手は無い。食欲の方にも気合いが入っていた。
「紅葉あれ美味しそう」
「百環これも取っていきましょ」
あれこれと盛り付けるうちに2人の手にしたお皿はすぐにいっぱいになる。これ食べたら2週目ね、ととりあえず席に座った。
「あ、待って百環食べる前に写真撮って藤弥にじま、幸せのおすそ分けしなきゃ」
「?そうだね」
変に言い淀んだ紅葉を一瞬気にしながらも、カメラを構えたのを見て百環は画角に入るように体勢をずらした。数枚撮って満足したのかカメラを下ろしたのを見て 姿勢を直す。
「最っ高に可愛い、1枚も見せられない写真がないわ」
今撮ったものを確認してるのか、紅葉は満足そうに声を漏らすとしばらくスマホを操作してすぐに画面を伏せた。
「さ、食べましょ!いただきます」
「いただきますー!」
______________
「なんだよぉー、2人して可愛い顔しやがって」
絶賛バイト中である藤弥の元に届いたメッセージ。それを見てまた恨めしそうに呟いていた。
【ご覧なさい、あんたの可愛い兄弟たちを】
【写真】
短い言葉と数枚の写真、癒しであるのは間違いないのだがその場に自分が居ないのが惜しいとぶすくれる。
「別にケーキは好きでも嫌いでもないけどさぁ、」
______________
「美味しかったー!」
「次は藤弥も連れて行きましょうね」
「今日すっごく残念そうだったもんね」
別れたあとも、紅葉からの幸せのおすそ分け(煽)でまたダメージを受けているが百環がそれを知る由はない。
結局2人はあの後ほぼ同じ量の甘味の山を3週した辺りで満足し、ホテルを出たところである。バイキングの為に昼食は控えめにしたとは言えそれなりの量を食べた2人、さてと目を合わせた。
「百環、藤弥に連絡してラーメン行くわよ」
「行こ行こ!甘い物食べたらしょっぱいの欲しいよねぇ」
この提案にツッコム者はいない。たとえこの場に藤弥が居たとしてもむしろ乗り気である事は間違いない。
この兄弟、というか家族はよく食べる。少し、いやかなり胃の容量が多いらしい。その食べた分が体型に全く反映されていないので食べたものがどこに行ってるかは謎である。
百環はスマホを操作して藤弥へメッセージを送る。バイト中であるはずなのにほぼ待つことなく返事がきた。
【あと1時間くらいで抜けれそう!家の近くのお店?】
「家の近くのお店?だって」
「今からそこ向かえば丁度いいかもね、そうしましょうか」
トーク画面を覗きながら紅葉が答える。
【うん!今から向かうからお店で待ち合わせで!】
ポコン、とOKの文字を掲げた兎のスタンプで返事が来たのを確認してスマホをポケットにしまう。ここから目的のラーメン屋までは徒歩と電車で30分ほど、すぐ向かうのかと百環は尋ねる。
「せっかくだし、藤弥にお土産でも買ってく?」
「そうしよ!あ、駅の近くにあるケーキ屋さんは?あそこ美味しいって言ってなかったっけ?」
「そういえばあったわね、そうしましょうか。」
駅へ向かう2人。大体の人ならあの量のケーキを食べた後にまたケーキを選びに行く気にはなれないと思うが杣山(ソマヤマ)家は胃袋ブラックホールなのでお構い無しである。
駅まで数分、今2人は目的のケーキ屋に入りショーケースの中のケーキ達を吟味している最中である。
「あ、これ藤弥好きそう」
「藤弥のは2、3個見繕って、、あ、このシュークリーム箱の貰ってもいいかしら。10個入の方で」
「オレ、フルーツタルトも食べたい」
「私もそれひとつ、と藤弥にもひとつ買って行きましょ。すいません、フルーツタルトも3つ追加でお願いします」
トータル、シュークリーム[10個入り]、フルーツタルト3ピース、藤弥のケーキが3ピース、それとショーケース上に並んでいた焼き菓子も6袋レジに持っていく。
「だいぶ買い込むね、今日はパーティーでもやるのかい?」
ケーキを詰める店員さんに声をかけられる。人の良さそうな優しい目をした人物だ。
「えぇ、友達が集まるのでそれ用に。ここの美味しいって聞いて気になってたので」
にっこり外面MAXで伝える紅葉。3人で食べます、と伝えれば驚かれて話が長くなるのが経験上分かっているので当たり障りのない答えを出す。
「嬉しいねぇ、そうだこれ、試作で作って形はあまり良くないんだけど味は問題ないんだ。良かったら持ってくかい?」
そう言って店員が奥の厨房から持ってきたのは美味しそうなホールケーキ。形は良くないと言いつつ綺麗に装飾の施されたものだった。
「悪いわ、こんな綺麗なのに」
「良いんですよ。毎日甘い物続きで自分も周りもあまり手が出なくてね、美味しく食べて貰えた方が嬉しいから」
「でしたらお代を、」
「いやいや、試作のものですし、持って行ってもらった方が家も助かるんですよ。どうしてもって言うなら、クリスマス辺りには完成品ができるはずだからそっちをまた買いに来て欲しいな」
「ふふ、おじさまお上手ね。わかったわ、クリスマスケーキはまたここに買いに来るわね」
お互いにこやかに話しているのに、何処と無く腹の中を探るような会話になっている横で百環は飽きもせずショーケースを眺めていた。見てたらまたお腹すいてきたな、なんて思っている。
「百環こっち持ってくれる?」
「あ、うん!あれ、なんか増えてる?」
「ケーキ頂いちゃったの」
「いつの間に?!おじさんありがとうございます!」
「はいよ、また来た時にでも感想聞かせてくれたら嬉しいな」
「絶対また来ます!」
大量のケーキを手に外に出るまで百環は空いてる方の手を振り、紅葉はにこやかに会釈をして去っていった。
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