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僕たち双子は貴族「櫻貝(おうがい)」の名を背負って、貴族学院に入学した。
入学式を終えてまだ数日しか経っていないのに、一年生の中にも既に奴隷を引き連れて廊下を闊歩している人がいる。
主人のド派手でゴージャスな服装とは真逆の汚いボロ布を纏っているところを見る限り、ろくな服を与えてもらえないのが一目瞭然。
フラフラとみっともなく歩いて、踏み出すたびに体を揺らすので腕についた鎖がジャラジャラと耳障りな音を立てる。
どの顔にも生気はなく、俯きがちな曇った瞳には何も写していない。
僕の隣を歩く藍(ラン)は、酷い扱いを受ける奴隷たちへの吐き気を抑えるので精一杯のようだった。
僕の服の袖をキュッとつかんでふらりふらりと片足ずつ踏み出すけれど、涙目で口を押さえているから本当に頼りない。
そんな藍を通り過ぎて行く人たちがどうしたのと言わんばかりの目で見つめて行くので、僕の袖を引く藍の手をくいくいっと引っ張った。
涙でうるんだ瞳が僕を見上げる。
「…大丈夫か」
随分辛そうなのもあるけれど、周りの目もある。
もし耐えられないようなら医療室にでも入ってもらわなければならない。
藍は小さくコクリとうなづいた。
それを確認して僕はまた歩き出す。
廊下の明かりは等間隔に取り付けられたランプだけだが、煌煌と照り輝いているから足元は割と明るい。
ただしそんなに見えやすいわけでもないし、ランプは廊下の片側にしかついていないので反対側の壁際は暗い。
ランプのない方を歩いていたせいで、藍は何度も転びかけていた。
できれば前を向いて歩いて欲しいけれどそれは無理だろう。
だって藍は「奴隷が嫌い」だから。
顔をあげれば見えてしまうから。
別に奴隷になった人たち一人一人が嫌いなわけじゃない。
ただそこに奴隷というものが存在するということが嫌いなんだ。
人が生まれ持った権利を殺されて無残に「使われる」姿。
それが大嫌いだと、いつか言っていた。
理解者のいない世界でたった二人、孤独に取り残された僕らはずっとそうやって、自分の心の内をお互いに分け合うことで良いことも嫌なことも乗り切って来た。
耐えられないと、助けてくれと藍が縋り付くのはいつも僕。
嫌じゃない。
人の上に立つことを強いられれば、気丈に振る舞うために心を許せる相手が必要になる。
僕らにとってはお互いが支え。
もちろん僕にとっての藍も然りだ。
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