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クリスマスSS ほっとけぇ~き!!(前編)
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クリスマスSS 早朝サンタ(ほっとけぇ~き)
あれは忘れもしない十二月六日の出来事。火曜日だった。
大学から帰ってきた俺を、同居人兼恋人であるヒビキがリビングに呼び寄せた。
ヒビキはらしくない厳つい顔つきで、きちんと正座している。凄い。このぽやんと星人が五分以上正座し続けている姿を、俺は初めて見た気がする。
「たっちゃん、ここ座って。」
それからヒビキは自分の前方をぽんぽんと手で叩いてから、その場に俺が座るよう指示した。…凄い。まるでドラマの中みたいだ。この後、俺は浮気を問い質されるに違いない。…浮気なんかしたことないけど。相手、否、候補すらいないけど。…あれ、何でだろう。酷く虚しくなってきた…。
俺の内心のテンションマックスさを横目に、ヒビキは神妙な面持ちで話し始める。
「あのさ、たっちゃん。」
同居を始めて、早くも半年と二か月が滞りなく過ぎていった。ここで、ケンカの一戦でも起きるのだろうか。雄々しい表情で迫ってくるヒビキ。…あ、ヤバい。割と攻めの姿勢入ったヒビキ好きなんだよな、俺…。
「オレら、二十四日、佐藤ン家にクリスマスパーティー行くの…??」
ヒビキの、場にそぐわない絶望的な声が響き渡る。
「・ ・ ・。」
俺はびっくりし過ぎて、三秒くらいあっけにとられてしまった。
「クリスマスパーティって…。お前も話出た時、うんうん頷いていたじゃん。佐藤ン家で、佐藤と種田と俺らの四人で、賑やかに過ごそうぜって…。」
目を点にして解説すると、悲愴感漂うヒビキが答える。
「うん。…でも、オレ達って恋人同士じゃん。」
「…まぁな。」
で、それがどうした。思いっきり訝しんでいるのが顔に出たらしく、ヒビキが食い気味に話し出す。
「クリスマスイブの夜は、恋人同士だけで過ごすもんじゃないの??それが何で友達とワッショイクリスマスパーティ??」
「わっしょいは夏だろ。」
「そうじゃなくて!!」
…いやまあ、ヒビキが言わんとしていることがわからんわけではないが。
「佐藤達にも言った通り、俺、今年のクリスマスは賑やかに過ごしたいんだよ。ワイワイガヤガヤ。…じゃあ、お前はクリスマスパーティ参加しねぇの??」
小首を傾げる俺にそっと顔を背け、ヒビキがそっと呟く。
「…となると邪魔なのは、佐藤と種田の二人か。」
ちっ、と鋭い舌打ちをした後で、ヒビキがにこやかに訊いてくる。
「たっちゃん、オレ、クリスマスケーキ切るための包丁持っていくよ。」
「いや、血迷うなよ。」
「殺戮だけに??…は!!計画が漏れてしまった!!」
俺は反射的にヒビキの頭を軽く叩く。
「漏れてしまった、じゃねぇんだよ!!んなピンポイントで刃物の類を持ち込もうとする奴怪しすぎんだろ!!あと、処理しようとすんな。血を流す以外の方法をまず思いつけ。思想がヤバいぞ、お前。」
「なるほど。オレが幽霊に扮して二人を驚かせ…。」
「友達に恐怖体験をさせないという選択肢はお前にないのか??」
鬼なのか、と訝しむ俺に、ヒビキはしゅんと肩を落とす。
「せ、せめて夜は二人きり…。」
「はぁ??…おいおい、そこは夜更かししてリビングで雑魚寝すんのが醍醐味ってもんだろ。恋バナとかして。」
「たっちゃん、それ中学の修学旅行と混同してない…??」
ヒビキにドン引きされた。っく、屈辱…!!
「良いじゃねぇか、雑魚寝!!夢があって。」
はいはい、と粗雑に頷かれた後で、ヒビキはやはり駄々をこね始める。
「ねぇ~、やっぱ断って二人だけで過ごそうよ~。せっかく二人だけで居られるチャンスなのに。」
「…だからぁ、それならお前は一人で大人しく家にいろよ、クリスマス。」
「いつ何時も、オレはたっちゃんのおそばにいるもん!!」
大学生にもなって『~もん!!』、って。密かにツッコミをいれつつ、はいはい、と俺は雑に頷いてみせた。
「…お前のその執着だけは、評価してやるよ。」
「え!?本当!?じゃあ、クリスマスは…。」
「四人でわいわい祝おうな。あと、もし俺と別れることがあっても、ストーカーにはなるんじゃねぇぞ、めんどくせぇから。」
「たっちゃぁぁぁ~ん!!」
うるさい同居人の金切り声を聞きながら、さてメシの支度でも始めようかねと俺は腰を上げた…。
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