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Lesson.3
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──『すごく綺麗な子だなって思った』
もう記憶から追い出したはずの影が、多希の脳裏にちらつく。
彼はそう言って……そう言いながら、ずっと自分のことを騙していたのだ。
自然と視線は、久住の薬指に吸い寄せられる。
でも、彼だってそこには何もなかった。
「……綺麗だったら、誰でもそう言うんですか。久住さんは」
「そう言う、とは?」
「だからその……綺麗だと思ったら、交際を申し込むんですか」
「いえ。何回か話してみて、もっと相手のことを知りたいと。もっと一緒に過ごしたいと思ったからです」
とっくに冷えてぬるくなったコーヒーに、多希は口付ける。
あの日、多希が久住を飲みに誘わなければ、セックスをすることもなかったし、今こうして告白をされることもなかったのでは。
後悔しているのなら、断ってしまえばいい。
自分が傷つきたくないのなら、久住を傷つけるしかない。
「仕事とプライベートは区別したいんです。なので、すみません」
「……? 俺は別に由衣濱先生といちゃいちゃしたいから、教室に通うわけではないです。きちんとプライベートは分けるつもりでいます」
「……いや、あの。そういう意味では」
多希はちらと時計を見る。九時四十五分。
かなり余裕を持って出勤したが、もう他の講師や生徒はほとんど集まっているだろう。
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