アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
Lesson.3
-
「先生はずっとこのお仕事を?」
「俺は元々レストランの料理係だったんですが、多忙で身体を壊してしまって。運よく起業した先輩に声をかけられて……って感じですね」
「俺が初日にお会いした方ですか。IT社長みたいな格好の」
まさに言い得て妙で、多希は声を出して笑った。
「でも、いい条件で働かせてくれるので、社長には感謝しています。今ってスマホで検索したらレシピなんてプロが書いたものとか、時短や家にある余りもので……とか。たくさん出てくるじゃないですか。差別化が必要だって社長には口酸っぱく言われてます」
「分かります。俺のところも数字についてはとにかく煩いです。医師の先生には会ってもらえないこともありますし、薬剤師の先生は上と相談しますね、で終わりですし。この前、うちでも営業は二割くらい減らされましたから。希望退職で」
昼休憩が終わる十分前になり、二人は店を出た。
何だか最後はお互いに愚痴っぽく言い合ってしまったが、不思議と気分は晴れ晴れしい。
久住はこれから個人病院と薬局で、製品の勉強会の予定があるらしい。
多希のほうは午後の講義が二つ入っている。
「お疲れさまです。先生」
「はい。久住さんもお疲れさまです」
久住は仰々しく頭を下げる。
多希も小さくお辞儀をすると、胸の前で手を振った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
54 / 146