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Lesson.3
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久住は「冗談?」みたいな顔をする。これは伝わっていないな。
多希は炭酸水で口の中をすっきりさせると、「さっきの講義」と切り出した。
「ああ。そのことですか。先生、困ってそうな顔をしていたので。余計なお世話でしたね」
「いや……助かりました。……というか、顔に出てましたかっ?」
「多分、ご婦人方は話すのに夢中で気付いてなかったと思いますよ。俺はよく由衣濱先生の顔を見ているので分かりました」
多希は飲みかけた炭酸を吹き出しそうになった。
「……っ。また口説きに来たんですか」
「あ、そういうわけでは。そう聞こえてしまったならすみません」
素直に頭を下げる久住を見て、何だか心地が悪くなってしまう。
今のは全面的に多希が悪い。警戒心を剥き出しにする多希とは違い、久住の対応は大人だ。
「先生、今日は体調は大丈夫ですか? お話しているとき、優れない様子だったので」
「体調? それは大丈夫、ですが」
昔、最悪な別れ方をした男と同じ名字を見て、久しぶりに思い出してしまったから。
あっちは多希のことなんて一時の遊びのつもりだったのだろう。
けれど、多希はいつまでも学生のときの恋愛を未練がましく引き摺っている。
もう好きじゃないと否定しても、もう取る必要のない連絡先は消せない。
きっと、繋がらないのに。
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