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Lesson.3
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久住との初めてのキスが、因縁の元彼の前というのは、何ともムードに欠けてしまうが。
多希にとってはちょっと……どころではなくて、かなりラッキーな出来事だった。
久住は放心した面持ちで「演技……」と呟いた。
「由衣濱先生がそう思ってるなら、俺は謝らなきゃいけません」
「え?」
「ほとんどが嫉妬で、ちょっとは下心です。すみません」
久住が頭を垂れた。
嘘をつけない久住の黒い瞳は、真っ直ぐに多希だけを映している。
ついこの前までは、感情をストレートにぶつけてくる久住から、逃れたいと思っていた。でも今は。
傷ついた過去が、多希の心を縛っている。
久住と同じ気持ちだと分かっているのに、それを伝えてしまうのが怖い。
「駅まで一緒に歩きますか」
「……はい」
特に交わす言葉もなく、多希は久住と並んで歩いた。
久住と別れて一人で電車に乗る間、アパートへ帰ってからも、多希は言えなかった想いを悶々と抱えるのだった。
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