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「日本の自殺者は約2万人。30分に一人の割合で自殺してるらしい」
ふと彼の口から発せられたその言葉に深い意味はないのだろう
殺しながらではないと生きていけないこの世界を生きているのは自殺行為なのだろうか
「まぁこれは昔の話で今はさらに多いんだろうがな……」
彼は自殺行為に対してどう思っているのだろう
嫌いなのかはたまたどうでもいいのか、圧倒的に後者であろう
自分の人生に関係ないものは等しくどうでもいい、彼はそう言う男なのだ。
裕福な、所謂上流階級で育ってきた人間でいろんな才能に満ち溢れている彼は自殺など無縁のもので、童話や御伽噺のように別時空のものであると思っているに違いない
俺様といっても俺様ではなくただの正義感に溢れた人間のようにしか感じられない彼に、嫌悪と憎悪と憧れを抱いている俺は彼に現実を教えたかった
彼の人生に少なからず関わっている自分が目の前で急行の電車に飛び込んだら……
目の前で微笑み彼への尊敬と嫉妬を向けたら、さぞかし面白い反応を見せるだろう
そう考えたら得体の知れない好奇心が襲った
彼に関係ないものと思わせないように、いつも死と隣合わせだとわからせる為にそのためなら自分の命も惜しくは無いだろう
そして俺は飛び込んだ
最後に映った彼の顔は今までしたことの無い、なんとも言えない顔だった
辛そうな顔をしているわけでも、面白い顔をしているわけでもなかった
ただの彼の顔だった
「ありが……」
最後の言葉を言えぬまま無常にも電車は俺を轢いて走っていく
思ったよりも痛かった
それは痛かった
彼にも
痛がってほしかった
無常にも走り去っていくその電車はまるで彼に皮肉られている様だった
『ただいま○○駅で人身事故がおこり運転再開まで三十分以上かかる恐れがございます――――。』
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