アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
8
-
———……
———……
「あの、ありがとうございます。こんな良いもの着せてもらって……」
七生は畏まって、肩を竦めて小さくなっていた。申し訳なさそうにする七生を見るなり、城島は眉を下げて笑った。
代わりにと渡された衣装はとても高価そうなもので、七生が着ていたものより質が良かった。生地の触り心地が良く、思わず恐縮してしまった。
「そんな良いもんでもねえよ。それに、破れた服じゃパーティーにもいられねえだろ」
「あ、ありがとう……」
それにそっちの方が似合ってる、と城島は付け足した。角ばっている大人びたものではなく、少し丸みのある白いタキシード。
鏡で見てみると、確かにさっきまで着ていたものと雰囲気が違っていて新鮮だ。元々タキシードなんて着慣れていなかった七生は、内心わくわくしていた。
「……ほれ」
鏡に写った自分を眺めていると、左頬にひやっとした冷たさを感じた。七生は思わずひゃっ、と身を縮める。
冷やしとけ、と渡された冷却剤。それを腫れている左頬に当てる。七生の白い肌には凄く目立つその腫れを見ていると、先刻起きた出来事を思い出してしまう。
(だめだ。思い出しちゃ……だめ……)
「あんまり無理すんなよ。大丈夫だから」
七生の頭をそう言って撫でた城島の手は、七生より一回りは大きくて骨ばった手だった。だけど優しくて、自然と心が暖かくなっていくようだった。
「はい。ありがとう、ございます」
「はは、何回お礼言うんだよ」
そう城島が笑うので、つられて七生も笑ってしまった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 178