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「くれぐれも、無礼のないようにしなさい」
七生の部屋のドアを叩いた時より優しく、その奥へ続く扉を叩くと、父親は「失礼します」と一言告げて中へ入る。
そこには、中央にテーブルが一つ置かれていて、上座に二人の男が座っていた。一人は白髪の髪を後ろで纏めて束ねている老人。そしてもう一人は、七生がどこかで見たことのある、自分と同世代の男。
けれど、若い男の表情は見るからに歪んでいて、不機嫌そうに俯いている。
(誰だろこの人たち……俺、何を……)
戸惑ってもたつく七生を見て、父親は軽く溜息を吐いた。
「八神さん、今回はありがとうございます」
「いえ、こちらこそ。声を掛けて頂いて助かりました」
大人たちの会話に、七生はじわりと汗ばむような不安を感じる。これは今までにも何度か感じたことのある感覚だ。
嫌な予感。心臓の辺りが、変にざわざわして落ち着かない。
「七生、挨拶しなさい」
「は、い……」
声が遠くなっていく。
何も聞こえなくなりそうだ。
「……八神七生です」
消え入りそうな声でそう言うと、向かいに座る老人が優しく笑った。「君のような子で、嬉しいよ」と声を掛けられたけれど、七生はそれどころではない。
今自分が、どういう状況に置かれているのかが分からなかった。
(どういうこと……?)
すると、隣に座る父親が淡々と、まるで事務的に話し始める。
「……何せ、一族に初めて生まれたオメガなもので。私どもも対応をするので精一杯でして。今回、城島さんにお声を掛けていただいて助かりました」
まさか御子息と、と付け加えた父親の表情は、笑顔だった。七生と顔を合わせている時の父親は、そんなふうには笑わない。
頭がぼうっとする。
ついに、自分が養子にでも出されたのだろうか。これは、そのための顔合わせか何かか。
頭が混乱して、どうにかなりそうだった。
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