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「俺は……オメガなので、他に道はないのかなって思ってます。この縁談も、俺は……受ける気でいるし」
「ふうん。……オメガねえ」
「難しいよな」と言い、ふん、と軽く息を吐くと、城島は七生をじっと見つめてきた。その眼差しは至って真剣で、どくどくと心臓が鳴った。
視線を足下へ落として、城島は「まぁ、そんなもんか」と笑う。
「……大変だよな、あんたも」
「い、いえ。そんなことは……」
どきどきと、心臓がうるさい。
七生はとても、城島の顔を見ることが出来なかった。アルファの人間というのはこんなにも、その他の性を惹きつけるものだっただろうか。
無論、そんな七生の気持ちは、「けど、それでいいのかよ」という冷たく言い放たれた城島の言葉で打ち消されてしまった。
「俺はアルファだけど、この性で生まれて良かったことなんて一つもない。何もかも親に敷かれたレールの上の人生だよ。それが我慢出来ないだけ」
だからこの縁談は受けられない、と城島は続けた。
「あんた……オメガなら尚更、そんなふうに生きてていいのか? パーティーでもあんな酷い目に遭って、それを父親は何も言わない。そんな親に報いるなんて、健気過ぎて心配になる」
え、と七生は少し開いた口からそう間抜けな声が出た。
一つは、そんなふうに自分は見えているのかということ。もう一つは、城島があのパーティーで助けた人物が自分だと覚えていたことだ。
(俺のこと……覚えててくれたんだ)
縁談を断られているというのに、七生は胸が弾むような感覚だった。こんな自分を覚えていてくれたという事実に、とてつもない嬉しさが込み上げてくる。気付かないうちに口角が上がり、うきうきとしていた。
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