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———……
———……
また、やってしまった。と七生は両手で顔を覆いながら下を向いている。
二週間ほど前に知り合った男に、二度も本気で泣きじゃくる姿を見せてしまった。七生は自分の行動を改めて思い返すと、とても目も当てられず、ただあわあわと開いた口を震わせていた。
恥ずかしくてとても、顔を見られる状況ではない。
「すみません、ほんとに……俺、泣いてばっかりで……」
「はは、ほんとに泣いてばっかだな」
そう笑う城島は、パーティーの時と同様に、泣いている七生の側で、優しく頭を撫でてくれていた。泣き止む時までずっと「大丈夫」と言って、まるで子どもをあやす様に、七生に肩を貸した。
もう平気?と聞いてくれた城島に、七生は全力で首を縦にぶんぶんと振る。
「もう落ち着きました。すみません、じゃあ俺、部屋に戻ります」
「おう。悪いな。縁談、断ることになって」
「いえ! 俺は大丈夫なんで!」
七生は、今度は心からの笑顔を向けて、城島にそう言った。ん、と短く返事をすると、「俺まだこのホテルいるから、暇だったらまた来いよ」と言って、宿泊しているホテルの部屋番号と、城島の連絡先を教えてくれた。
「……携帯まで使えねえってことねえよな?」
「それは全然ないです! 使用人の方とも連絡取ることがあるので」
そう答えると、城島は優しく笑う。七生は、自分に向けられた笑顔が嬉しくて、胸がどきどきする。
今まで、使用人以外には心配されたことも、頭を撫でられたこともなかったので、七生はその初めてがとても嬉しかった。
宥めてくれた優しい声が、ずっと耳から離れていかない。ずっと、ここに居たいとさえ思うような、そんな居心地の良さを感じたのも初めてだった。
そして、その“初めて”には、不思議と不安や戸惑いが感じられない。
(……城島さんに、会えて良かったな)
心の中で、七生は何度も繰り返し思った。
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