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外を見ると、もう日が落ちかけていることに気付いて、もう帰らないとと七生は涙を拭いた。
部屋を出たところで、すん、と不意に城島が鼻を鳴らす。片手で口元を軽く抑えると、何やら疑わしげに七生を見ていた。
「……八神(やがみ)、ってさ。香水とか付けんの?」
「えっ、特に付けてないですけど……」
何か臭いますか? と、七生は自分の服の臭いや肌の臭いを嗅いでみる。けれどそれは、いつも使用人が使ってくれている花の香りの柔軟剤のものだ。
「いつもの柔軟剤の匂いがします」
その答えに「柔軟剤……」と城島は呟く。
「……オメガは他のアルファとかベータとは違う匂いは元からするんだけど、八神のはこう……なんていうか」
「なんていうか……?」
「他とはちょっと違う、甘ったるい匂いが……」
そこまで聞いて、七生は、はっとした。
今まで忘れていたものを思い出して、額には汗が滲む。いつも朝に飲んでいた薬を、今朝はすっかり忘れていたことに気付いたのだ。
今日は一日自室で休む予定だったために、夜に飲めば平気だろうと思っていた。
「すみません、俺、用事思い出したので今日はこれで! さようなら!」
後ろで城島が名前を呼んでいたけれど、七生はそれに振り向くことも出来ない。今はただ、薬を飲んで匂いを消さなければいけないことに焦っていた。
(発情の抑制剤、飲まないと、来る……!)
オメガの人間は、月に一度、“発情期”と呼ばれるものがやってくる。
それは、アルファを自分へ惹きつけようとする働きがあり、セックスをすると大体は治るもので、発情期に入ったオメガは独特のフェロモンを発して、アルファを呼び寄せる。
多くは一週間程度自宅に籠り、匂いを飛ばさなくなった段階まで落ち着かせることが必要だが、七生の場合はアルファが周りに多いために、医者から発情を抑制する薬が処方されている。
それも、七生のフェロモンの香りに、父親や兄弟が当てられないようにするためだった。
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