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三
あれから、七生はホテルの窓からぼうっと外を眺めていることが多くなった。階下には車が何台も行き交い、人が群れになって大勢歩いている。
一人でいて退屈なのは変わらなかったけれど、最近は携帯を見る頻度が増した。
きっかけは、城島を説得しに行った日———彼はホテルに宿泊しているから、暇になったら来ても良いと、部屋番号と連絡先を七生に教えてくれた。
発情期に入ってしまったため、念のためにと医者に診てもらい、薬を新しく処方された。そこから、何日か安静にして、ようやく普段通りに回復したけれど。
「七生様、いけません。警護の出来る者がいないので、本日はお部屋から出ないで下さいませ」
ぴしゃりと、七生の部屋付の使用人に言われてしまった。せっかく元気になったのに、といじけてみても、使用人の対応は変わらずだった。
会いに行くことが出来ないならと、貰った連絡先にメッセージを送ったのが始まりだ。
『城島さんこんにちは。七生です。先日は変な別れ方をしてしまいすみませんでした。また、お部屋にお邪魔しても良いですか?』
長文になってしまったと気にした文面にも、城島は気付くとすぐに返事をくれた。
『それは良いけど。親父伝いに何となく話は聞いてる。体調平気か? 元気ならいつでも来いよ』
気遣ってくれているのだと分かる度に、七生は胸がどきどきと脈打っていた。新鮮でどこかこそばゆいその感覚が、とても心地良いもので、感じたことのない胸の高鳴りに益々わくわくしていた。
あれから、七生は父親に説得した結果を伝えたけれど、取り合ってもらえていない。何度か考え直して欲しいとも、別の相手との縁談なら受けるとも言ってみたが、それは通用しなかった。
ただ冷たい目で自分を見つめる父親に、そろそろ根気が負けてしまいそうで不安になる。
(城島さんは縁談受ける気ないんだから、それを尊重してあげられないのかな)
そう思うと、無意識のうちに溜息が漏れた。なんとなく、がっかりしている自分がいる。
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