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縁談が無しになったなら、自分はどうなるんだろう———七生はそんなことを考える。きっと、すぐにでもイギリスへ帰ることになるのだろう。あの父親のことだから、もっと扱いが酷くなってしまうかも知れない。
七生は少し不安になった。
この縁談がダメでも、オメガの男子を受け入れてくれるところが他にあるなら、自分はそこへ嫁ぐ気持ちはある。父親の役に立ちたいと思っていた。
けれど———
「城島さんと会えなくなるのは、なんかやだな……」
頭を撫でてくれたあの暖かくて優しい手。それに、もう少し触れていたいと思っている自分がいる。こんな感覚は初めてで、七生は自分の頬が熱を持つのを感じた。
これじゃあまるで、自分は城島のことが好きみたいじゃないか。
(す、き……って)
———泣きたいなら泣けばいい。
———またいつでも来いよ。
優しく囁く城島の声が、すぐに聞こえてくるようだ。相変わらず心臓がどきどきとうるさい。顔が熱を持っていて、とても熱くなってくる。
(俺……城島さんのこと好きなの?)
よりによって、縁談を断ってきた相手をそんなふうに意識してしまうとは思わなかった。
七生はおろおろとして、震えた手から携帯を落としてしまう。画面には、“城島太史”の文字があった。
『今日十四時からなら空いてるけど、来る?』
その文面に、七生の表情は一気に明るくなった。
『はい! 行きます!』
と返事を送ってから、部屋にいた使用人に「城島さんに会いに行きます」と言うと、これはすんなり受け入れてくれたので、七生はひどく拍子抜けした。
———……
———……
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